
米実業家イーロン・マスク氏が率いる宇宙・衛星通信会社「スペースX」の株価が、株式市場で異次元の急上昇を見せています。同社は6月12日に米ナスダック市場に過去最大の規模で新規株式公開(IPO)を果たしました。上場から数日後の16日、同社株は前日比4.8%高の201.80ドルで取引を終え、終値ベースの時価総額は約2兆6550億ドルに達しました。先週の上場実施時点から約8000億ドルも増加しており、16日時点で米上場企業5位だったアマゾン・ドット・コムの時価総額を約100億ドル上回り、世界で最も価値ある企業のリストを急速に駆け上がりました。
取引時間中には一時、株価が225.64ドルまで急騰する場面もありました。この時点の一時最高値ベースの推定時価総額は約2兆9700億ドル(日本円で約475兆円)に膨れ上がりました。これにより、アマゾン・ドット・コムを逆転したのみならず、時価総額3兆ドル規模のIT大手マイクロソフトをも一時的に抜き去って世界4位に浮上しました。なお、現在の米上場企業トップ水準は約5兆ドルの時価総額を持つエヌビディアとなっています。
この記録的な暴騰を強烈に後押ししたのが、16日に新たに開始されたオプション取引の活況です。同日の売買高は610億ドルに達し、米国の上場大手企業の中で最大を記録しました。午後には売りが強まり上昇分の大半を吐き出す場面も見られましたが、投資家の熱気は依然として高い状態にあります。さらに同日、スペースXはプログラミング向けAIを手がける新興企業「Cursor」を600億ドルで買収すると発表し、宇宙事業にとどまらないAI分野への本格展開も大きな好材料となりました。
今後は、ナスダック100指数への早期組み入れが決定しているほか、6月26日付でFTSEラッセル、6月29日付でMSCIの主要株価指数にそれぞれ追加される予定です。同指数に連動するパッシブファンドや上場投資信託(ETF)の主要な組み入れ銘柄となるため、同社株への新たな巨大な需要が生まれ、上昇が続く可能性があると見込まれています。ネット上では「スターリンクの成長力とAIの将来性を考えれば妥当かもしれない」「急激なバブル崩壊が恐ろしい」といった様々な意見が寄せられています。
過熱する市場への懸念 事業の実体と投機バブルのリスク
急激な企業価値の膨張に対しては、市場から強い警戒の声も上がっています。実際に事業の足元を見ると、スペースXの直近の年間売上高は180億ドル台にとどまり、時価総額で肉薄するマイクロソフトの売上高(約2800億ドル)とは大きな開きがあります。さらに、主力事業の一つである衛星通信部門を除けば営業赤字の状態であり、事業全体でも49億ドルの最終赤字を計上している事実が指摘されています。こうした財務状況と現在の極端な企業価値との乖離から、現在の株価はファンダメンタルズから離れた「期待先行」の評価であるとの見方が市場に広がっています。
上場直後の異常とも言える買いの熱狂は、世界的な金余りを背景に、巨額の資金が投資先を求めて流動している結果とも言えます。現在の株価水準が事業のファンダメンタルズから大きく乖離し、実体経済から離れた投機的なバブルを形成しているのではないかという議論も根強く続いています。巨額の資金が集中するテクノロジー企業への期待感が高まる一方で、その反動による急激な価格変動のリスクも存在しており、今後の動向には慎重な見極めが求められます。












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