
官民ファンド「海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)」が6月24日に発表した2025年度決算で、累積損失額が540億円に膨らんだことが明らかになりました。2025年度の売上高は前年度比88%減の約44億円にとどまる一方、純損益は156億円の赤字。単年度ベースでも大きな損失を抱える結果となりました。
同機構は、日本のアニメや食文化などを海外に売り込むことを目的に2013年に設立された官民ファンドで、政府が約1400億円を出資する成長戦略の柱です。しかし投資先の業績不振が続き、累積損失は計画を大きく上回りました。
政府と機構は、2026年3月末時点での累積損失を426億円以内に抑えることを目標に掲げていました。2024年度末時点での累積損失はすでに383億円に達しており、そこからさらに約160億円の赤字が拡大。目標との差は114億円にまで広がった格好です。
経済産業省は「累積損失が目標を上回った場合には、他の機関との統合または廃止を前提に具体的な道筋を検討する」と説明しており、今回の決算でその条件が現実のものとなりました。
投資案件の中でも象徴的なのが、人工タンパク質素材(バイオ繊維)を手がけるベンチャー「Spiber(スパイバー)」への出資です。同機構はスパイバーに約140億円を投じてきましたが、コロナ禍や円安を背景にした材料費の高騰などが重なり、同社は2025年12月期に大幅な債務超過に陥りました。
2026年3月の株主総会でスパイバーは私的整理を決定し、事業を新会社へ譲渡。クールジャパン機構は多額の減損損失を余儀なくされました。リスクの高い案件への集中投資に加え、投資先の収益化の遅れが重なり、日本の魅力を海外需要の拡大に結びつけるという当初の構想との乖離が、あらためて浮き彫りになっています。
経産省が検討会設置へ 官民ファンド政策の岐路
累積損失が目標を大きく上回ったことを受け、経済産業省は7月以降に有識者による検討会議を立ち上げ、クールジャパン機構の今後について統廃合を前提に議論する方針です。赤沢亮正経済産業相は会見で、他の官民ファンドとの統合案も含めて年内をめどに方向性を示すと述べており、産業政策ツールとしての官民ファンドの在り方が問われることになります。
クールジャパン機構は、日本文化の海外発信という政策目的の評価と、投資事業としての収益性確保の間で揺れ動いてきた経緯があります。現地での日本食レストラン展開やコンテンツ配信など一定の成果を上げた案件もありましたが、全体としての収益構造を改められないまま10年以上が経過しました。
今回の統廃合検討は、単一ファンドの経営問題にとどまりません。官民連携による成長投資という日本の産業政策の実効性やガバナンスをどう再設計するかという、より大きな問いにつながります。統合運用によるコスト削減や投資判断プロセスの見直しを求める声もあり、クールジャパンの理念をどう引き継ぐかについても、議論は避けられない見通しです。












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