
自動車業界において、特定の国に依存しないサプライチェーンの構築が急務となっています。中国が生産で7割、精錬工程では9割という圧倒的な世界シェアを握るレアアースの使用を削減し、脱依存を図る動きが各社で活発化しています。この背景には、2010年の中国漁船衝突事件に端を発する輸出規制があり、近年再び重要鉱物の対日輸出規制が強化される中で、政治的動向に左右されない「レアアースフリー」の実現が業界全体の大きな課題となっています。
こうした中、国内の部品メーカーは独自技術による打開策を打ち出しています。自動車部品大手のAstemo(アステモ)は昨年10月に、EV向けの新型モーターを発表しました。このモーターは、レアアースの一種であるネオジムを一切使用せず、代わりに地球上に豊富に存在する鉄を主成分とする特殊な磁石を採用しています。また、同じく部品メーカーのミツバも鉄を主成分とするモーターを開発し、2023年から量産を開始しました。このモーターは既にホンダのセダンであるアコードに搭載されており、レアアースフリー技術が実用化の段階へと大きく前進していることを示しています。
完成車メーカー側も長年にわたり研究開発を進めてきました。ホンダは2016年に大同特殊鋼と共同で、重希土類を使用しない画期的な磁石のモーターを開発し、ミニバンのフリードに搭載しました。同社はさらに技術を磨き、将来的には車両全体でのレアアース不使用を目標に掲げています。一方、日産自動車は、今年発売された新型リーフにおいて、モーターに使用される重希土類を初代モデルと比較して実に9割削減することに成功しました。高い走行性能を維持しつつ着実な成果を上げています。
中国の輸出規制という地政学的なリスクが顕在化する中で、日本企業によるこれらの技術革新は、経済安全保障の観点からも極めて重要です。具体的には、前述したAstemoの鉄主成分磁石によるレアアース不使用の新型モーター、ミツバの鉄主成分磁石モーターの量産と適用、日産自動車の新型リーフにおけるレアアース9割削減、そしてホンダのフリード等での重希土類不使用磁石採用と将来的な完全不使用に向けた目標といった確かな実績が挙げられます。部品メーカーと自動車メーカーが一体となって進めるこうした材料開発やモーター設計の見直しにより、持続可能な次世代の電動車プラットフォームが築かれつつあります。
経済安全保障に向けた脱中国依存の動きと今後の展望
日産自動車の新型リーフにおける重希土類の9割削減という成果は、自動車業界全体に大きな波及効果をもたらすと期待されています。特定の国家による資源の独占や輸出制限は、グローバルな事業展開を行う企業にとって最大の脅威の一つです。そのため、高価で供給が不安定な鉱物への依存を断ち切ることは、EV市場における長期的な競争力強化に直結します。
さらに、こうした脱中国依存と経済安全保障を狙う動きは、単一の企業にとどまらず、素材産業やエレクトロニクス分野など幅広く波及していくと予測されます。ホンダや日産自動車、そしてAstemoなどの国内メーカーが先行して築き上げた技術力は、今後の「フリー供給網」構築における世界的なスタンダードとなる可能性を秘めています。次世代モビリティの本格的な普及に向けて、レアアースを用いない革新的なモーター技術のさらなる進化と、それに伴う新たな国内サプライチェーンの確立が強く求められています。





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