
高市早苗首相は、ホルムズ海峡の事実上の封鎖で露呈した中東依存リスクと、人工知能(AI)普及による電力需要増大を同時に踏まえ、日本のエネルギー需給構造を抜本的に強化する新たな計画づくりを指示しました。
政府は26日、首相官邸で中東情勢に関する関係閣僚会議を開きました。 高市首相はこの場で、エネルギーの需要と供給の構造を強靱化するための「総合パッケージ」を8月末までに取りまとめるよう、赤沢亮正経済産業相に指示したと表明しました。 パッケージでは、再生可能エネルギーや原子力発電を含むGX(グリーントランスフォーメーション)の取り組みを「パワーアップ」し、エネルギー調達の多角化を進める方針です。
高市首相は、人工知能(AI)の進展により電力需要の増加が見込まれる中、それに応えられる電力供給を確保できるかどうかが、日本の成長戦略にとって重要な課題だと強調しました。 生成AIやデータセンターの拡大で電力需要が増すなか、安定した電源を確保しつつ、脱炭素にも対応するエネルギー政策の再設計を急ぐ狙いがあります。 首相は「エネルギーの選択肢を増やし、ピンチをチャンスに、成長の力に転換する」と述べ、危機対応と成長戦略を一体で進める姿勢を示しました。
今回の方針の背景には、米国とイランの間の軍事衝突を受け、原油輸送の要衝であるホルムズ海峡が事実上封鎖され、日本のエネルギー安全保障への懸念が高まったことがあります。 日本はこれまで原油輸入の多くを中東地域に依存してきましたが、海峡封鎖により供給途絶リスクが現実味を帯びたことで、政府は民間備蓄の活用や調達先の分散などを含む対応を検討してきました。 高市首相は国会で、国内には254日分の石油備蓄があると説明する一方、情勢の長期化に備えた総合的なエネルギー戦略の必要性を繰り返し訴えてきました。
中東依存低減とGX加速、企業の「目詰まり」解消も課題
新たな総合パッケージでは、中東依存度を下げるエネルギー調達の多角化が柱の一つとなる見通しです。 具体的には、再生可能エネルギーの導入拡大に加え、原子力発電の活用やLNG調達先の分散などを通じて、供給源と電源構成を見直す方向性が示されています。 ホルムズ海峡の封鎖が長期化した場合でも、国内産業への影響を最小限に抑える「強靱な」需給体制を構築することが政府の目標です。
一方、ホルムズ海峡の封鎖をめぐっては、米国などが「航行の自由」の重要性を訴える共同声明の枠組みを検討する中、日本政府は自衛隊派遣など安全保障関連法に基づく措置について慎重な姿勢を維持しています。 高市政権は、軍事的関与の判断には時間をかける一方で、石油備蓄の活用や外交努力による情勢緩和に取り組みつつ、民間企業のサプライチェーンの「目詰まり」解消に向けた支援を続ける方針です。 化学関連製品など一部の品薄懸念が生じている中で、政府は物流や代替調達を含む具体策を総合パッケージに盛り込む構えだとされています。
AIによる電力需要増と中東情勢の不透明化が重なるなか、エネルギー政策は経済成長と安全保障の両面を左右するテーマとなっています。 8月末に向けて策定される新計画が、国内の電力インフラ、脱炭素投資、企業活動にどこまで具体的な道筋を示せるかが、今後の焦点になりそうです。
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