
6月29日のニューヨーク外国為替市場において、円相場は対ドルで一時1ドル=161円98銭近辺まで急落しました。これは、プラザ合意後の円高局面であった1986年12月以来、実に約39年半ぶりとなる歴史的な円安・ドル高水準となります。東京市場から続く円安の流れを引き継ぎ、日本時間の午後11時前には節目とされた2024年7月の安値である161円96銭を割り込みました。直後には利益確定などで円高方向に10銭程度振れる場面も見られましたが、トレンドは変わらず再び円安に傾き、午後3時ごろには161円98銭を付けました。
この記録的な円安の最大の要因は、米国の力強い景気拡大です。雇用や個人消費などの経済指標が相次いで改善しており、中東情勢を背景とした物価高も重なる中、市場では米連邦準備制度理事会(FRB)が年内に1〜2回程度の追加利上げを実施するとの思惑が広がっています。これにより米金利の上昇が続き、より高い利回りを求める世界の投資マネーがドル資産へ流入しやすくなっており、ユーロなど他の主要通貨に対してもドルが全面高の展開を見せています。
対照的に日本では、日本銀行が16日に政策金利を1%へ引き上げ、約10年続けた異次元緩和からの正常化を進めました。本来であれば円高要因に働きやすいものの、物価上昇を考慮した日本の実質金利は依然として極めて低水準にあり、利上げが追いついていないとの見方から根深い円売り圧力が残存しています。2022年から始まった円安の大きな流れにより、この4年半で円は対ドルで3割近く下落しました。
また、高市早苗首相の緩和志向の経済政策への警戒や、イラン情勢による有事のドル買い、エネルギー輸入に伴う実需の円売り、新NISA(少額投資非課税制度)を通じた海外株投資など、構造的な要因も円相場を持続的に押し下げています。円安は輸出企業の競争力を高める一方で、輸入インフレを通じて国内の個人消費を力強く押し下げる可能性が高まっています。
政府・日銀の対応と為替介入への警戒感
歴史的な円安水準への到達を受け、政府・日銀が円買い・ドル売りの為替介入に踏み切るのではないかとの警戒感が市場全体に広がっています。介入によって急激な円高が進む事態に備え、あらかじめ円を買っておこうとする投資家の動きも見られ、6月下旬に161円台後半まで円安が進行した後は、円売りと円買いが拮抗して相場は膠着状態が続きました。
市場の関心が高まる中、介入の有無を巡り、22日の夜には、片山さつき財務相と米国のベッセント財務長官がオンラインで協議を行ったことが明らかになりました。外国為替市場の動向について踏み込んだ意見交換が行われたとみられており、片山氏は23日の取材に対し、「日米間で常に必要とあらば断固とした措置をとることで合意している。それに関しては全く揺るぎがない」と強調しました。さらに30日の閣議後記者会見でも、円安進行について「必要に応じていつでも適切に対応する」と述べ、市場を牽制しています。
ドル買い・円売りの主因となっているのは、年内1〜2回の追加利上げ観測がある米国と、1%への利上げを実施したものの依然としてインフレに劣後し極めて低い実質金利にとどまる日本との金融政策の方向性の違いです。加えて、雇用や消費を中心に力強く拡大する米国に対し、日本では個人消費押し下げの懸念があるなど、両国の経済のファンダメンタルズの差が、ドル資産への投資マネー集中と構造的な資金流出を招いています。こうした日米の実質金利差や経済状況の違いが為替の底流として横たわる中で、当局は投機的な動きを強く牽制しつつ、市場の警戒感を維持させる対応を続けています。












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