
暗号資産(仮想通貨)の積極的な買い増しで知られる米ストラテジー(旧マイクロストラテジー)は6月29日、これまでの実質的に「ビットコインを決して売却しない」としてきた強気な方針を転換し、新たな資本管理策である「デジタルクレジット資本フレームワーク」を発表しました。この計画では、自社の流動性を確保し現金準備を強化するため、最大12億5000万ドル(約2020億円)相当のビットコインを売却する可能性が公式に承認されています。
共同創業者兼会長のマイケル・セイラー氏は長年、証券を発行して調達した資金をさらに大規模なビットコイン購入へ振り向けるという自己強化型の資金調達モデルを牽引してきました。しかし、近年の相場下落に伴い、同社の企業価値が歴史上初めて保有するビットコインの価値を下回り、mNAV比率が0.99まで低下しました。これにより、新規発行による資金調達上の優位性が著しく損なわれています。同社は今後、株価と保有するビットコインの価値がほぼ同水準の場合、普通株の新規発行により慎重な姿勢を取るとしています。この発表を受け、同社の普通株は一時6.5%上昇した後、上げ幅を縮小しました。
この財務的圧力に対処するため、取締役会はクラスA普通株式(MSTR)と優先デジタル・クレジット証券に対して、それぞれ最大10億ドルずつの自社株買いプログラムを設定しました。また、ディスカウント価格で取引されていた優先株「STRC」の配当率(またはクーポンレート)を年率12%へ引き上げ、価格を額面の100ドル付近へ戻すことを目指します。直近の普通株売却によって同社の現金準備は現在25億5000万ドルに達しており、少なくとも今後12カ月分の配当と利払いを確実に賄う方針です。今後は証券発行による買い増し手法に依存せず、新たな資金調達の魅力が低下した局面での柔軟な対応が可能となる体制へと移行します。
専門家の厳しい視線と暗号資産市場への波及効果
市場の関心は、自己強化型の同社の資金調達モデルが、長期的な相場下落局面でも機能し続けられるのかという疑問に集まっています。リップル社のCEOであるブラッド・ガーリングハウス氏は、同社のアプローチを「長期的な価値を生み出さない金融工学」と厳しく批判し、強引な資金調達スキームが暗号資産市場全体にリスクを及ぼすと警告しました。また、大手運用会社グレースケールのリサーチ責任者は、単なる配当率の操作ではなく、少なくとも30億ドル以上のビットコインを売却して手元現金を確保する方が、市場の信頼回復に直接的に繋がると提言しています。
ビットコインの需要はストラテジーのような少数の巨大な機関投資家への依存度が高まっているため、このタイミングでの方針変更は市場全体に極めて大きな意味を持ちます。実際、29日の発表直後から投資家の警戒感が強まり、ビットコインの価格は心理的節目の6万ドルの大台を下回って取引されました。証券発行に依存したモデルからの脱却が短期的な防衛策に終わるのか、それとも長期的な弱気相場でも生き残れる持続可能な財務戦略となるのか、今後の動向が注視されています。












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