
近畿日本鉄道を中核とする近鉄グループホールディングスは、三菱UFJ銀行と業務提携し、2027年3月より個人向け銀行サービスに本格参入すると発表しました。専用スマートフォンアプリを通じて展開される新サービス「近鉄 KIPS BANK powered by 三菱UFJ銀行(仮称)」は、預金や住宅ローン等の金融機能を備える予定です。これは、金融機関が外部にシステム基盤を提供する仕組み「BaaS(バース)」を活用したもので、国内の鉄道会社とメガバンクによる直接提携は初の試みとなります。近鉄は共通ポイントサービス「KIPS」の会員約170万人を強固な土台とし、サービス開始から5年間で20万口座の開設を目指しています。沿線人口の減少を見据え、これまで手薄だった若年層をデジタル接点で確実に取り込むとともに、日々の移動や購買履歴と金融取引データを高度に連携させた精緻なマーケティングで、沿線経済の活性化を図る狙いがあります。
関西エリアでは他の鉄道事業者も金融領域への進出を相次いで加速させています。JR西日本が関西みらい銀行と資本業務提携を締結し、2027年度中に新サービス「WESTERミライバンク(仮称)」を立ち上げる計画です。関西みらい銀行の社長に対する一部報道機関のインタビューによれば、本サービスでは、新規100万口座の開設と預金1兆円の獲得という大規模な目標を設定し、公式アプリ「WESTER」に銀行機能を組み込むことで決済やポイント獲得を移動と完全に一体化させます。さらに、阪急阪神ホールディングスも池田泉州銀行と共同で、ネット銀行サービス「(仮称)Hankyu Hanshin cross BANK(阪急阪神ネットバンク)」を2027年以降に開始する方針を発表しました。このように、近鉄グループホールディングスと三菱UFJ銀行が組む2027年3月開始予定の「近鉄KIPS BANK」(目標20万口座)や、JR西日本と関西みらい銀行による2027年度中開始予定の「WESTERミライバンク」(目標100万口座)など、関西の主要インフラを担う各社が各々の提携先とともに同時期に金融ビジネスを本格稼働させることで、地域住民の顧客基盤獲得に向けた競争がかつてない規模で熱を帯びています。
先行するJR東日本と広がる独自の経済圏構築
こうした鉄道事業と金融の融合において、全国的な先行モデルとして市場に大きなインパクトを与えているのがJR東日本の取り組みです。JR東日本は2024年5月、楽天銀行の金融インフラを活用し、デジタル金融サービス「JRE BANK」を開始しました。口座の預金残高や給与受け取りなどの利用状況に応じて、営業路線内の片道運賃および特急料金が4割引になる優待割引券を年間で最大10枚付与するなど、自社の強固な鉄道インフラを最大限に活かした強力なインセンティブ設計が利用者の大きな反響を呼んでいます。
インフラ維持にかかる固定費が高い一方で、空席を特典として提供する限界費用が極めて低い鉄道事業の特性を活かした還元策は、他業種の金融サービスには真似の難しい強みです。鉄道各社は単なる「移動インフラ」から、顧客の生活全体を支え価値を循環させる「巨大な生活基盤プラットフォーム」へと急速な進化を遂げつつあり、今後も各社による独自経済圏の拡大に注目が集まります。












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