
空飛ぶクルマやドローンの研究開発をめぐる国の公募事業で、日本航空(JAL)が補助金や委託費を不適切に受給していたことが分かりました。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト」などが対象です。
同社は社内調査の結果、労務費の申請が実際の労働時間と異なる形で行われていたと認め、受領済みの労務費約3億2123万円のうち約2億8521万円を返還する方針です。対象となるのは、2021年度から2026年度にかけて実施された計5件の事業で、空飛ぶクルマやドローンの安全な運航や運用管理に関する研究開発などが含まれていました。
JALによると、研究員らは本来の業務にかかった時間ではなく、事前に計画として割り振られた時間を日誌に記載し、そのまま労務費として申請していたケースが確認されています。調査ではこの記載方法について「合理性がない」と判断しました。
報道によれば、2025年夏には担当部署の幹部が統一的な記入マニュアルを作成し、2026年1月に研究員から法令違反の可能性を指摘する声が上がった際、幹部側から事実上の「口止め」があったとされています。その後、内部通報を受けて社内調査と外部弁護士による調査が行われ、今回の不適切受給が公表されました。
JALは記者会見で、イノベーション本部長の飯山高広氏が「誠に申し訳ございませんでした」と陳謝し、原因として予算の100%執行に対する現場への過度なプレッシャーがあったと説明しました。
客観的な根拠がある労働時間のみを基準とした再申請と返還を行うほか、進行中のNEDO関連事業のうち3件については自主的に辞退する一方、空飛ぶクルマとドローンの計2事業は継続する方針です。労務管理のルールや内部統制の強化を含む再発防止策も進めています。
次世代空モビリティ政策への波紋と企業ガバナンスの課題
今回の不適切受給は、国が次世代空モビリティ分野に投じてきた研究開発予算の使われ方にも波紋を広げています。NEDOや経済産業省は、eVTOL(電動垂直離着陸機)やドローンといった技術を活用し、地域交通の課題解決や大阪・関西万博を契機とした新たな移動手段の社会実装を目指してきました。
その中核プレイヤーの一つである大手航空会社で組織的な不正が確認されたことは、同種事業に参加する企業全体に対する監査・検証のあり方について、見直す必要性を示しています。
JALは補助金の返還と事業辞退という形で一定の対応を示しました。しかし、幹部主導とみられる記録の実態と異なる記載や口止めの疑惑が明らかになったことで、同社のコンプライアンス意識やガバナンス体制のあり方が問われる事態となっています。
とはいえ、空飛ぶクルマやドローンの社会実装に関する政策自体には、地方の移動手段や災害対応力の向上といった期待も根強くあります。政府やNEDOには透明性の高い制度運営が、企業側には内部統制の徹底が、それぞれ求められる局面といえそうです。









-280x210.png)


-300x169.jpg)