
夏休みの海外旅行者数が6年ぶりに減少する見通しとなり、燃油サーチャージの高騰や円安が、旅行需要に影を落としている状況です。
旅行会社JTBがまとめた2026年夏休み(7月15日~8月31日)の旅行動向によると、海外旅行者数は前年同期比8.8%減の217万人にとどまる見通しです。 海外旅行者数が前年を下回るのは、新型コロナ禍からの回復後では初めてで、2019年以降では6年ぶりのマイナスとなります。
背景には、航空会社が国際線運賃に上乗せする燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)の大幅な引き上げに加え、円安による旅行費用の増加があります。 JTBの調査では、燃油サーチャージが高額となる米国やオーストラリアなどの長距離路線が敬遠され、比較的航空券代が安い韓国や台湾など近距離のアジア方面への需要が増えていると分析しています。
総旅行者数は4.6%減の7117万人と見込まれ、夏休みの国内外の旅行全体で減少が予測されるのも6年ぶりです。 海外旅行に関しては、アジア方面が全体の約8割を占める見通しで、近場への「シフト」が一段と鮮明になっています。 一方で、1人当たりの平均旅行費用は、海外旅行で6.3%増の32万3000円へと上昇すると推計されており、円安や燃油高が家計に重くのしかかっている実情がうかがえます。
国内旅行も例外ではなく、旅行者数は4.4%減の6900万人にとどまる見通しで、節約志向の高まりが顕著です。 国内旅行の平均費用は3.2%増の4万8500円とされ、物価高の影響を受けつつも、「旅行自体は維持しながら、回数や滞在日数、消費額を抑える」という行動が広がっているとみられます。
この調査は、全国の15~79歳の男女1万人を対象とした事前アンケートで「夏休みに旅行に行く」「たぶん行く」と答えた2060人を対象に、本調査を実施したものです。 調査期間は6月8~11日で、経済環境や消費者意識の変化を反映した夏休み需要の最新動向として注目されています。
旅行需要に広がる「選択と集中」、観光地側にも対応迫る
燃油サーチャージや円安の影響で旅行費用がかさむなか、消費者は「距離」と「滞在スタイル」を選別しながら旅行を計画する傾向が強まっています。 近距離の韓国や台湾などは、週末を含む短期旅行の行き先として支持を集めており、航空券代を抑えつつも、現地での体験や食事に重点を置く旅行が人気です。
一方で、米国やオーストラリアなど燃油サーチャージが6万円を超えるケースもある長距離路線については、家計への負担感から敬遠される見通しで、コロナ後にようやく回復しつつあった遠距離海外旅行の需要に再びブレーキがかかる可能性があります。 こうした「近場シフト」は、アジア地域の観光地にとっては追い風となる一方、日本国内の地方観光地にとっては競争の激化という側面も生み出しています。
国内旅行では、交通費や宿泊費の値上がりを背景に、滞在日数を短くしたり、食事や観光オプションの選択を絞るなど、支出を抑えながら旅行を続ける「選択と集中」の動きが広がっています。 JTBの過去の調査でも、ボーナスや賃金の動向が旅行意欲を左右してきましたが、今回は物価高や為替の影響がより強く意識されている点が特徴です。
観光地や事業者側には、こうした需要変化に対応した商品設計が求められています。近場の海外や国内の短期旅行に合わせたダイナミックパッケージや、現地体験を重視したプランづくりが重要になるほか、燃油高・円安局面でも「費用対効果」の高さを訴求できるサービスが鍵となりそうです。 旅行が「遠くへ行く贅沢」から「限られた予算の中で、体験価値を最大化する選択」へと移りつつある今夏の動向は、今後の観光産業の方向性を占う試金石ともいえる状況です。












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