
静岡県のリニア中央新幹線静岡工区を巡り、10年近く続いた着工論議が、鈴木康友知事の「着工容認」表明で大きな転機を迎えました。鈴木知事は7月7日の県議会全員協議会で着工容認を正式に表明。県とJR東海が重ねてきた水資源や発生土、生物多様性など3分野28項目の対話に加え、住民の理解醸成が進み、法令上の手続きにもめどが立ったことを理由に挙げています。
静岡工区は、山梨・静岡・長野3県にまたがる南アルプストンネルの一部で、静岡市葵区北部を横切る約8.9キロの区間です。前任の川勝平太知事は、大井川の水量減少や生態系への影響への懸念から、2017年に着工反対の姿勢を鮮明にして以降、リニア計画は長らく足踏みが続きました。こうしたなかで2026年3月、県とJR東海は対話を完了し、議論は一つの節目を迎えています。
対話完了を受けJR東海は同年5月から6月にかけて、静岡市や大井川流域10市町で計22回の住民説明会を実施しました。7月1日にはJR東海の丹羽俊介社長が県庁を訪れて鈴木知事に状況を報告し、これを受けて知事は着工容認を表明するに至っています。
知事就任後、鈴木氏はリニア問題で「スピード感」を強調し、着工容認に前向きな姿勢を繰り返し示してきました。2024年5月に川勝前知事が不適切発言を理由に辞職して以降、リニア推進を掲げる鈴木氏が知事に就いたことで、県とJR東海の協議は加速しています。JR東海は静岡工区の年内着工も視野に入れており、完成までには10年ほどかかる見通しです。
リニア中央新幹線は、東京・品川と名古屋、大阪の三大都市圏を結ぶ新たな幹線鉄道で、開業すれば品川-名古屋間を最速40分、品川-大阪間を最速67分で結ぶとされています。JR東海は当初掲げていた品川-名古屋間の2027年開業目標を2024年3月に断念しており、新たな開業時期は最短2036年と見込まれています。
環境保全協定締結へ 大井川と南アルプスの課題は「次の局面」に
静岡県とJR東海は、リニア静岡工区の着工前提となる「自然環境保全協定」を県条例に基づき締結する方針で、7月18日の署名が決まっています。協定では、大井川の水量や地下水への影響、工事で発生する土砂の扱い、南アルプスの希少生物の保全などについて、JR東海が講じる対策と監視の枠組みが整理される見通しです。
大井川流域では、「命の水」の保全を最優先に、長年慎重な議論が続いてきました。川勝前知事は流域自治体や住民の不安の声を背景に着工の認可を見送ってきた一方、JR東海は技術的な方策で水資源への影響を抑えつつ、モニタリング体制の強化も進めてきました。
鈴木知事は着工判断を県政の大きなヤマ場と表現していますが、一部の市町からは議論の速さに戸惑う声も上がっています。












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