
電子商取引(EC)サイトやフリマサービスを舞台にした不正取引の拡大を受け、警察庁は7月9日、メルカリ、LINEヤフー、楽天グループの3社と不正取引に関する情報共有の協定を締結しました。協定の対象となるのは、ネットショッピングやネットオークション、フリマアプリなど、3社が提供するほぼ全てのEC関連サービスです。
これまで、他人名義のクレジットカードを悪用した商品購入や、商品が届かない架空出品、偽ブランド品の販売、チケットの違法転売など、ECやフリマの仕組みを悪用した手口が後を絶たない状況が続いてきました。警察庁によると、クレジットカードの不正利用による被害額はここ数年、毎年500億円規模に達しており、オンライン取引をめぐる犯罪は深刻な社会問題になっています。
新しい枠組みでは、各社が顧客からの通報や独自のモニタリングなどで「不正の可能性が高い」と判断した取引やアカウントを把握した場合、氏名や住所、電話番号、メールアドレス、クレジットカード情報、取引日時、金額、配送先住所などの関連情報を警察庁に提供します。情報はサイバー警察局など警察庁側で、既存の捜査情報と突き合わせながら横断的に分析され、必要と判断した場合には、協定を結ぶ他社にも還元されます。
警察庁が一元的に情報を管理することで、複数のサイトをまたいで行われる組織的な不正取引の全体像を捉えやすくなることが期待されています。例えば、ゲーム機や電子たばこなど換金性の高い商品の大量購入や、同一の住所へ短期間に繰り返し商品が配送されているケースなど、サイトを横断したパターン分析により、個社の取り組みだけでは見えなかった不正の兆候を早期に把握できる可能性があります。
協定締結に合わせ、国家公安委員長の赤間二郎氏は会見で「警察庁をハブとした官民連携の情報共有によって、不正取引の撲滅につなげたい」と強調しました。今回の枠組みは、政府がまとめた「国民を詐欺から守るための総合対策2.0」を具体化する施策の一つで、EC分野の詐欺や不正利用に対する対策強化の柱として位置づけられています。
事業者の対応と利用者への影響
分析結果の提供を受けた各社は、不正が疑われるアカウントの停止や、商品の配送差し止め、利用者への注意喚起などの対応を行い、被害の未然防止や拡大防止を図る方針です。これにより、個々のサイトで発覚した不審な取引情報が他社にも共有されるため、一つのサービスから別のサービスへと場を移しながら不正を繰り返す行為を封じ込めやすくなるとみられます。
運用は協定締結と同日の7月9日から始まっており、警察庁は提供情報を捜査にも活用する方針です。分析の結果、被害防止にとどまらず、詐欺グループの特定や摘発につながるケースも想定され、必要に応じて各都道府県警との情報共有も行われます。
一方で、正当な取引が誤って「不正の可能性が高い」と判定される懸念もあり、各社はプレスリリースなどで「適切にサービスを利用するユーザーが不利益を被らないよう配慮する」と説明しています。インターネット取引が生活に欠かせないインフラとなる中、犯罪対策と利用者保護をいかに両立させるかが、今後の官民連携の大きな課題となりそうです。
警察とEC事業者の本格的な情報連携は、安心してオンライン取引を利用できる環境づくりに向けた一歩ですが、利用者側にも怪しい出品や過度に割安な商品に注意し、被害に遭った際は速やかに通報する姿勢が求められています。






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