
「パワハラ問題」が、TVをはじめ、よく取り上げられていますね。
「これってパワハラにあたるのかな」と気を使っている方も多いのではないでしょうか。
中には、実際「パワハラですよ」と指摘され、「自分の接し方が悪いのかな」と気に病んでいる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、そもそもパワハラは単に個人を責めて終わるものではありません。実は組織がより良く生まれ変わるための大切なサインともいえるのです。
今回は、そんなパワハラの現状を見つめ直し、職場全体が前向きに成長していくためのヒントを一緒に探っていきましょう。
パワハラは「5人に1人」が経験している
まずは、現在の日本におけるパワハラの実態を客観的なデータから見ていきましょう。
厚生労働省の令和5年度の調査によると、過去3年間に職場でパワハラを経験した人の割合は19.3%で、約5人に1人がパワハラを経験している状況が続いています。
さらに、パワハラを受けた人のうち最も多い36.9%の人が「何もしなかった」と答え、その理由の多くは「何をしても解決にならない」という結果でした。
多くの人が職場に諦めを抱いているのは悲しいことですね。しかし、パワハラ問題には誰もが安心して相談できる環境をつくる大切なヒントがたくさん隠されているのです。
パワハラの芽を摘む「感じるパワハラ」という新しい視点
では、パワハラを上手に活用するにはどうすればいいのか。
その鍵になるのは、「感じるパワハラ」です。
実はパワハラの専門家は、パワハラを「明確なパワハラ」と「感じるパワハラ」の2つに分けて考えています。
明確なパワハラとは客観的な事実が存在するケースですね。一方、感じるパワハラとは、法律上の定義には当てはまらなくても部下側が主観的に「パワハラだ」と悩んでいる状態です。
この感じるパワハラについて、専門家は「パワハラのヒヤリハット」であり、部下からの大切なSOSであると指摘しています。
ここで解決すべきなのは出来事の正しさではなく、傷ついた感情や悩みの解消です。
お互いに正しさを一度手放して、対話を通じて主観的な思いをまず聞いてみることが大切だといわれています。
この段階で丁寧に向き合えるかどうかで、深刻なパワハラへと発展するかが決まるのです。
職場を「ホーム」に変える具体的な取り組みと成功例
では、実際に組織としてどのような対策を講じればよいのか。パワハラを上手に「組織の発展」に活用できた一例を紹介します。
これは、ある高度急性期病院で行われたハラスメント防止活動です。この病院では、以下のような取り組みを同時にスタートさせました。
- 病院長自らが真摯に取り組む姿勢を繰り返し発信する
- 誰でも安心して相談できる体制や窓口をしっかりと整備する
- 怒りの感情をコントロールするための「アンガーマネジメント」研修を実施する
- 友好の気持ちを体現する「挨拶推進運動」を全体で展開する
するとどうでしょう。
それぞれの部署で36%の人が「パワハラが減った」「やや減った」と答え、「増えた」と感じる人(7%)を大きく上回るという結果となったのです。 また、活動開始の1年後に意識調査を行ったところ、全体の約64%の職員が「活動は効果があった」と回答しました。
特に、最大の要因になりやすい怒りにアプローチする「アンガーマネジメント」の普及は、職員の意識を変える大きな効果をもたらしたと考えられています。
環境を変えるためのていねいな「場づくり」を行うと、職場は緊張や萎縮を強いられる場所から、実力を最大限に発揮できる「ホーム」のような場所へと変わっていくのですね。
パワハラを「なくす」から「活かす」未来へ
パワハラが発生したとき、多くの組織は内密に処理して終わらせようとしてしまいがちです。
しかし、これからの時代に必要なのは、ハラスメントを単なるトラブルとして恐れないこと。パワハラを組織の社風やマネジメントを見直すための「重要なサイン」として前向きに活用していく姿勢です。
パワハラを個人と組織が抱える「未解決問題」ととらえ、個人と企業の成長につなげていく。誰かを罰するだけでなく、関わる全員が当事者意識を持ち、相手の視点に立つ学びを深めていくことです。
それこそが、働く人すべてのキャリアと人権を守り、みんなが輝ける職場をつくることにつながるのではないでしょうか。
参考文献:
1.和田隆.パワーハラスメント防止の現場から.産業精神保健 2024;32:287–291.
2.大浦裕之,宮田剛. 医療機関におけるパワーハラスメント抑止に向けた防止対策体制の構築.臨床倫理 2025;13:21-30.
3.厚生労働省.上司から同僚から社内から社外から…… 調査から読み取る 職場におけるハラスメント対策.




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