
7月10日、人工知能(AI)の能力向上を目的として、企業による個人データ収集の規制を緩和する改正個人情報保護法が、参議院本会議で可決され、成立しました。この改正法は公布後、原則として2年以内に施行され、具体的な運用は今後の規則やガイドラインで定められる予定です。
今回の法改正は、AI開発競争において米国や中国などの先行国に後れを取る日本の産業競争力を底上げする狙いがあります。最大の変更点は、AIモデルの学習や統計作成の目的に限り、本人の同意なしに個人情報を第三者へ提供できる「統計特例」が設けられたことです。これまで企業や病院が保有するデータを外部提供する際は原則として本人の同意が必要でしたが、このプロセスが大幅に省略されることになります。特例の対象には、犯罪歴、人種、病歴といった機微性の高い「要配慮個人情報」が含まれており、企業側はより効率的に大量の学習用データを収集できるようになります。また、法令違反によって得た利益を事業者が保持し続ける「やり得」を防ぐため、違反行為で得た利益相当額を徴収できる課徴金制度も新たに創設されました。
法案の採決では、自由民主党、日本維新の会、国民民主党、チームみらいなどの賛成多数で成立しました。しかし、立憲民主党、公明党、参政党、日本共産党といった各党は、国民に不利益が生じる懸念を払拭しきれていないとの理由から反対に回っています。国会審議やSNS上では、本人の意図しない形で病歴や思想信条がAI事業者に収集され、個人のリスト化や差別といった不利益が生じることへの懸念が根強く残っています。政府は個人データが本人を特定できないよう加工されると説明していますが、データ利活用の促進と並行して、プライバシー侵害を防ぐ強固な仕組みづくりと国民の不安解消が今後の大きな課題となります。
個人情報漏えい件数は過去2番目の多さに 安全管理への懸念高まる
一方、個人情報の安全管理体制に関しては深刻な課題が浮き彫りになっています。政府が2026年7月7日に閣議決定した個人情報保護委員会の2025年度年次報告によると、同年度の漏えい報告件数は1万9417件に上り、過去最高だった前年度に次ぐ2番目の多さとなりました。部門別に見ますと、民間事業者からの漏えい報告件数は2024年度の1万9056件から減少して1万7139件となりました。一方で、行政機関等による漏えい報告件数は2024年度の1951件から2278件へと増加し、過去最高を記録しています。
民間事業者の漏えい事案のうち、6割を超える1万603件が病院や薬局での書類誤交付などによる「要配慮個人情報」の流出でした。また、不正目的のおそれがある事案も3822件に達し、名簿業者には初の緊急命令が出されています。同日の閣議後記者会見において、松本尚デジタル相(サイバー安全保障担当大臣)は「どういった再発防止策をとるかもチェックし、対応を進めていきたい」と述べ、再発防止の徹底を呼びかけました。改正法によって機微な個人情報の流通がさらに拡大することを見据え、官民双方における徹底した情報管理体制の強化が急務となっています。





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