
成田空港(千葉県成田市)の機能強化計画で、新設するC滑走路(全長3500メートル)と既存のB滑走路(2500メートル)の1000メートル延伸に必要な用地取得が難航する中、空港を運営する成田国際空港会社(NAA)が土地収用法に基づく事業認定を国土交通相に申請する方針を固めました。 千葉県と周辺9市町を含む「4者協議会」で7月に開かれた会合では、関係する全自治体が土地収用の活用を容認する方向で一致し、地元側の合意形成が進んだことが、申請を後押しした形です。
成田空港の機能強化は、国際線需要の回復と首都圏空港の国際競争力向上を背景に、2018年に国・千葉県・地元自治体・NAAが合意した計画で、C滑走路新設とB滑走路延伸を柱としています。 しかし、必要な用地約1099ヘクタールのうち、取得率は約9割にとどまり、一部の地権者との交渉が長期化。NAAは住民説明会を重ね任意取得を続けてきましたが、当初2029年3月末としていた供用開始目標は延期され、B滑走路延伸部の先行供用を優先する方針が示されています。
土地収用法は、道路や空港など公共性の高い事業に必要な土地について、地権者の同意が得られない場合でも「正当な補償」を前提に強制取得を可能にする制度です。 事業者が国土交通相に事業認定を申請し、公益性などの審査を経て認定を受けると、都道府県の収用委員会が補償額や明け渡し期限を裁決し、それでも地権者が応じなければ知事による代執行で土地を取得できます。 成田空港では、かつての「成田闘争」で代執行をめぐる激しい衝突が発生し、多くの死傷者を出した歴史があり、その反省から1990年代以降は地元との話し合いを重視する路線へ転換してきました。
それだけに、土地収用の本格的な検討は「極めて重い判断」として受け止められています。 一方で、地元の経済団体や一部自治体からは、機能強化の遅れが地域振興に影響しかねないとの懸念が示され、強制収用を含む抜本的な打開策を求める声も上がってきました。 NAAは、これまでの任意交渉で一定の理解が広がったとしつつ、残る用地を巡る調整には限界があると判断し、申請後も対話を続けながら、最終手段として土地収用制度を活用する構えです。
成田の歴史と「もろ刃の剣」 国際競争力と住民との信頼の両立が焦点に
国は既に、必要な用地を今月末までに取得するようNAAに求めつつ、取得が長期化した場合は土地収用の活用もやむを得ないとの姿勢を示してきました。 ただ、金子恭之国土交通相は、成田の歴史的経緯を踏まえ「地元の理解を得る努力を続けることが不可欠だ」とも述べており、申請後も住民との対話を続けるようNAAに求めています。
今後、事業認定の手続きが進めば、公益性や補償の妥当性を巡る議論が一段と高まりそうです。 C滑走路の供用開始時期は依然として見通せない中、B滑走路延伸の先行供用と土地収用の活用の是非が、成田空港の将来像や地域との共生のあり方を左右することになります。 かつて激しい対立の舞台となった成田の地で、「最後の手段」をどう使うのか。国と空港会社、地元自治体、住民の間で、時間をかけた冷静な議論が問われています。












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