
SNS型投資詐欺の被害の拡大が続いている。警察庁の調査によると初期接触はInstagram(インスタグラム)などのSNSが大半を占めており、年齢や性別問わず被害に遭うリスクがあるのが現状だ。最近では50代女性がSNS上で投資関係の広告を見つけ、著名人を名乗る者に誘導されて1億円以上を振り込む被害に遭っている。
高額被害も相次ぐが、実際に投資詐欺への誘導はどのように行われているのか。ある有名なInstagramアカウントが乗っ取りに遭っていることに気付いた筆者は、投資詐欺グループに接触。その後、多数の投資詐欺に対処する弁護士の佐久間大地氏に話を聞いた。
<目次>
SNSアカウントの乗っ取りから始まる投資勧誘

2026年6月某日、ある有名な地方在住、テナントを運営するインフルエンサーのアカウントがInstagramの機能である「ストーリーズ」に不自然な内容を投稿した。ストーリーズとはInstagramの24時間で消える投稿機能だ。
そのアカウントは、普段、自身が運営する施設の営業時間などを告知している。しかし、この日はインターネット投資で利益を得たことや投資家を紹介する内容を投稿していた。この文章を不審に思った筆者は、ストーリーズの投稿から誘導していた「投資家」のアカウントへ接触を試みた。
「投資について教えてください」とメッセージを送ると、わずか1分後に返信が届いた。
長年投資経験があると名乗る株式ブローカーとの間で、InstagramのDM機能を用いたチャットが始まった。
「日本人か」と問われ、「日本人である」と答えると「約96%の効率で大きな利益を得、損失がありません(原文ママ)」と投資への誘導が始まった。ブローカーの書いた日本語に誤字や脱字はない。しかし、若干違和感のある日本語であり、海外からのDMが疑われる。
ブローカーは「「bitbank(ビットバンク)」のアプリをダウンロードして、口座を作成するように」と続けた。bitbank(ビットバンク)はテレビCMで見かける取引所だ。「日本の大手が間に入るなら安全」と思わせる誘導である。
口座の開設をせずに様子をうかがっていた筆者。試しに「口座を開設した」と伝えてみると、その証拠となる写真を送付するように指示を受けた。また、迅速にレスポンスを返さなければ矢継ぎ早に投資を薦められる。しかし、筆者が通話機能を使っても応じない。

もしも実際にbitbankの口座を開設するとどうなるのだろうか。一般的には、日本円の入金と暗号資産の購入を急かすと言われている。暗号資産の購入を行うと、即座に英数字が複雑に羅列された「暗号資産の送金先アドレス」とURLが送られることが多い。
たとえば、「購入したイーサリアムを、今から言うアドレスに全額送金してください。私の指示通りにやれば、絶対に損はしません」などのセリフで送金を促されるという。つまり、日本の大手取引所である「bitbank」は日本の法律や警察の手が届かない海外の闇口座へ暗号資産を送金させるための中継基地に過ぎないと推測される。
暗号資産の送金は通常の銀行振込とは異なり、「一度送金してしまえば、組戻し(キャンセルの手続き)がシステム上絶対に不可能」という詐欺グループに悪用されやすい特徴がある。
投資詐欺の被害から身を守る方法

SNSを端緒とした投資詐欺の被害が深刻化するなか、私たちはどのように身を守ればいいのだろうか。数多くの投資詐欺問題に対処する「大地総合法律事務所」の佐久間大地弁護士に、近年の投資詐欺グループの手口の実態と、被害を未然に防ぐための対策について話をうかがった。
――今回はInstagramを利用した投資詐欺に接触しましたが、現代の投資詐欺にはどのような特徴があるでしょうか
まず、投資詐欺の多くのケースで海外の組織が関与している点が挙げられます。
以前は不自然な日本語を使ったDMが多く、詐欺と気付きやすかったです。しかし、詐欺グループ側がAIを使いこなせるようになり、これまでよりも自然なコミュニケーションが可能となっております。
手口も多様化しており、Instagram以外にもThreadsやX(旧Twitter)、Facebook MessengerなどSNSのダイレクトメッセージ機能があれば、どのプラットフォームでも投資詐欺が発生しています。
送金方法についても、以前と比較すると変化が見られています。これまではATMなどから銀行口座へ振り込みさせるような行為が多かったです。しかし、金融機関側の対策が強化されており実行しにくくなりました。そこで詐欺グループ側は「ひと手間」をかけさせるようになりました。暗号資産(仮想通貨)や個人ウォレットを介して送金させる手法が主流になっています。
今回のようにbitbankなどの正規の取引所口座を開設させ、そこから送金させるケースも多いですね。銀行以外の決済システムを悪用しています。
投資被害の被害者の年齢層としては、中年以降の高齢者が主流です。男女差はほとんどありません。投資詐欺は「お金を持っている人」を狙うため、若い方よりも資産を持つ中高齢層が標的になりやすい傾向があります。
投資詐欺は副業詐欺や商材詐欺など、少額を何度も狙う詐欺とは異なります。一度に大きな金額を狙っているため、他の詐欺よりもこの傾向が強いです。
――投資詐欺に遭わないようにするためにはどうすればいいですか
「会ったことのない人に、送金してはいけない」という点に尽きますね。
インターネットの発達により、スマートフォンのアプリで大きな投資を実行したり、現金を振り込めるようになりました。気軽に現金を動かすことへの違和感は減少しつつあると言えるでしょう。
しかし、わざわざ複雑な操作を命じて送金するという状況は、違和感しかありません。詐欺にはいろんな方法がありますが、特に投資詐欺は高額の送金を促す傾向がありますから、不慣れな操作をさせる時点で詐欺を疑い、送金する手を必ず止めてください。

佐久間 大地(さくま だいち)弁護士
中央大学法学部政治学科卒業、中央大学法科大学院修了。都内法律事務所勤務を経て、大地総合法律事務所を開業。詐欺・借金・消費者被害に関する法的支援を専門に扱う。
相談実績は5万件を超える。「詐欺師が最も嫌がること」を熟知しており、日々の相談対応・交渉・訴訟を通じて、被害者救済と生活再建の支援に取り組んでいる。












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