
日本の国旗を傷つける行為に刑罰を科す「国旗の損壊等の処罰に関する法律」(いわゆる日本国旗損壊罪)が、17日の参院本会議で自民党、日本維新の会などの賛成多数により可決・成立しました。
自民、維新、国民民主、参政の4党が議員立法として共同提出した同法は、国旗を「人に著しく不快または嫌悪の情を催させる方法」で「公然と損壊、除去、汚損」した場合に、2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金を科す内容です。
対象となる「国旗」は、国旗及び国歌に関する法律に定める日章旗として用いられていると社会通念上認められる有体物とされており、「お子さまランチの旗」や絵画の一部として描かれた旗、アニメや生成AIによる創作物などは処罰の対象外と明記されています。
法案の創設は、連立与党である自民党と日本維新の会が2025年10月の連立政権合意書で「外国国旗のみが保護されている現状は矛盾だ」として是正を掲げたことを受けたものです。
刑法第92条が外国国旗・国章の損壊のみを犯罪としている現行制度とのバランスを取る狙いも強調されており、罰則水準は同条と同じ「2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金」に合わせられました。
衆院内閣委員会での審議では、国旗損壊行為を報道したり、他者の投稿をリポストする行為は処罰対象外とする一方、自ら国旗を損壊する様子をライブ配信する行為は、公然性が認められるとして罰則の対象になるとされています。
成立した法律は、公布の日から20日を経過した日から施行される予定で、運用のあり方や捜査実務における判断基準が今後の焦点となります。
懸念の声と今後の論点
国旗損壊罪の審議過程では、一部野党や法律実務家、弁護士会などから、処罰対象となる行為の範囲が曖昧で、憲法が保障する表現の自由や思想・良心の自由を侵害する恐れがあるとの懸念が繰り返し示されました。
法案は「人に著しく不快または嫌悪の情を催させる方法」という抽象的な表現で行為を規定しているため、政治的デモや芸術表現など、国旗を用いた象徴的な行為がどこまで罰則の対象になるのか分かりにくいとの指摘があります。
こうした批判を受け、衆参両院の内閣委員会では付帯決議が採択され、国旗への政治的意見の記載や芸術表現は処罰対象に該当しないこと、そして萎縮効果を招かないよう法律の趣旨を十分に周知することが政府に求められました。
成立した法律の第3条は、適用にあたって「表現の自由その他の日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に侵害しないように留意しなければならない」と定めており、運用面での歯止め規定として位置づけられています。
人権団体や弁護士会は、象徴的行為も含めた広い意味での表現の自由を保障する国際人権規約の趣旨に反するとして、今後も見直しを求めていく考えを示しています。
一方で、与党側は「国旗を大切に思う国民感情」を保護法益として掲げ、国旗への故意の損壊行為は社会通念に照らして一定の規制が必要だと主張しており、表現の自由と国旗の尊重をどう両立させるかが、施行後の重要な論点となる見通しです。
今後、捜査当局がどのような事案を立件対象とするのか、また裁判所が「著しく不快、嫌悪の情」をどのように具体化して判断するのかによって、法律の実質的な射程が定まっていくことになります。
国旗損壊罪をめぐる議論は、国の象徴に対する敬意と、批判や抗議の表現としての象徴的行為をどこまで許容するのかという、民主社会における根源的な問いを浮かび上がらせていると言えます。












-300x169.jpg)