ダイドー、野村総研、パナソニックの明暗。インフレや関税の荒波を乗り越える「経常利益の伸び率」ランキング20社

インフレの進行により、国内の環境は大きく変化しました。日本は長らくデフレが続いたため、企業は低価格で高品質の商品やサービスを提供する傾向にありました。一方で、インフレの情勢では、付加価値を乗せた値段の高い商品・サービスを販売し、さらに従業員の賃金を引き上げなければなりません。
また、トランプ関税なども起こり、自動車を中心とした輸出産業もサプライチェーンの見直しを迫られました。AIの急速な普及によるIT産業の構造的な変化も同時に起こっており、従来のビジネスモデルが通用しなくなりつつあります。
この記事では、東証プライム市場に上場する企業の中で、今期の経常利益の伸び率が高いトップ20をランキング形式で紹介します。「伸び率」は、今期の企業予想と前期の業績を比較した数値で、たとえば、今期(2027年3月期)の経常利益が前期(2026年3月期)の2倍に増える予想を企業側が出している場合、経常利益の伸び率は2.00倍になります。
※ランキングは2026年6月1日16時時点のデータを集計したものです。
<目次>
今期の経常利益の伸び率トップ20
| 順位 | 企業名 | 経常利益伸び率(倍) | 今期経常利益予想 | 決算月 |
| 1 | ダイドーグループホールディングス | 5.73 | 84億円 | 2027年1月期 |
| 2 | 野村総合研究所 | 3.01 | 1770億円 | 2027年3月期 |
| 3 | 野村マイクロ・サイエンス | 2.66 | 150億円 | 2027年3月期 |
| 4 | グッドコムアセット | 2.65 | 68億4300万円 | 2026年10月期 |
| 5 | ブロードリーフ | 2.56 | 47億5000万円 | 2026年6月期 |
| 6 | フルヤ金属 | 2.34 | 220億円 | 2026年6月期 |
| 7 | レゾナック | 2.29 | 1030億円 | 2026年12月期 |
| 8 | パナソニックホールディングス | 2.09 | 5500億円 | 2027年3月期 |
| 9 | 芙蓉総合リース | 1.96 | 750億円 | 2027年3月期 |
| 10 | CKサンエツ | 1.77 | 100億円 | 2027年3月期 |
| 11 | 横浜冷凍 | 1.75 | 64億円 | 2026年9月期 |
| 12 | トリドールホールディングス | 1.73 | 140億円 | 2027年3月期 |
| 13 | プロクレアホールディングス | 1.72 | 113億円 | 2027年3月期 |
| 14 | インフォマート | 1.71 | 48億3500万円 | 2026年12月期 |
| 15 | バリューHR | 1.70 | 16億3000万円 | 2026年12月期 |
| 16 | ユニオンツール | 1.60 | 130億円 | 2026年12月期 |
| 17 | 高島 | 1.58 | 24億円 | 2027年3月期 |
| 18 | ARCHION(日野自動車と三菱ふそうトラック・バスの持株会社) | 1.56 | 1100億円 | 2027年3月期 |
| 19 | ツルハホールディングス | 1.56 | 981億円 | 2027年2月期 |
| 20 | マルマエ | 1.55 | 30億円 | 2026年8月期 |
自動販売機の苦戦で減損損失を計上したダイドー

ランキングの1位は飲料大手の一角であるダイドーグループホールディングスです。今期の経常利益は前期の5.7倍に急拡大する見込み。一見すると業績が好調に推移していると捉えられるかもしれません。しかし、これはダイドーが苦戦していることの裏返しでもあります。
ダイドーは高度経済成長期にパーキングエリアやガソリンスタンドに清涼飲料やカップコーヒーの自動販売機を設置することで急成長を遂げました。自動販売機はスーパーやディスカウントストアなどと異なり、リベートを必要とせず、基本的には値引きせずに販売できます。そのため採算性の高いビジネスだったのです。
しかし、物価高が進行すると消費者はドラッグストアやスーパーなどで安い商品を購入するようになり、外出する際も水筒を持ち歩くなど節約志向が高まります。また、コンビニで多様な種類の飲み物を買えるようになりました。その結果、自動販売機での販売数量が減少したのです。
さらに自動販売機の維持に必要な管理維持費も高騰します。キャッシュレス機能を追加する費用が必要になり、人件費が上昇したことでメンテナンス費用も上がりました。これらの複合的な要因により、ダイドーは2026年1月期の国内飲料事業で3.3%の減収、22億円を超える損失を出しました。国内飲料事業における事業関連資産の減損損失は298億2600万円を計上しています。
この状況から抜け出すために、ダイドーは2万台の自動販売機を撤去する計画を打ち出しました。自動販売機で苦戦しているのはダイドーだけではありません。コカ・コーラ ボトラーズジャパン、伊藤園も厳しい戦いを強いられています。
悪材料を出し尽くした野村総研

ランキングの2位はコンサルティングやシステム開発などを手がける野村総合研究所です。今期の経常利益は3倍に拡大する見込みです。野村総研は2026年3月期に、豪州で769億円、北米で199億円ののれん等の減損損失を計上し、利益が大きく減少していました。今期の業績予想はその反動と言えるでしょう。
のれんとは、M&Aをする際の被買収企業の純資産と買収額の差額です。たとえば、純資産100の会社を200で買収すると、100がのれんとして計上されます。のれんの減損損失は、買収した会社の収益性や成長性が計画時よりも小さかったと判断された時に起こります。つまり、野村総研の買収は当初想定していた成果を十分に上げられなかったことを示しています。
当時は注力する業種やサービスの絞り込みが不十分で、シナジー効果を生み出すことができませんでした。一方、巨額の減損損失を計上したことで償却負担が軽くなり、利益が出やすい体質へと変化しています。
3位の野村マイクロ・サイエンスは半導体産業向けの装置の設計や施工、販売を手がける企業です。半導体関連企業の設備投資は旺盛であるものの、2026年3月期は大型装置受注の反動を受けて受注高が半減しました。その影響で経常利益も6割近く減少しましたが、今期は従来の収益力を取り戻す形です。
アメリカの政策に翻弄されるパナソニック

ランキングの8位はパナソニックホールディングスです。今期の経常利益はおよそ2.1倍に拡大する予定です。2026年3月期のパナソニックは車載電池などを扱うエナジー事業の苦戦が目立ちました。アメリカのトランプ政権によるEV購入補助金や優遇税制の撤廃・縮小、環境規制の緩和が急速に進み、多くの自動車メーカーはEV生産の軌道修正を迫られました。
パナソニックと繋がりが強いホンダは北米向けEV3モデルの開発・発売を中止。EV開発を目的としたホンダとソニーの合弁会社も事業方針の見直しで休眠化しています。
トランプ関税の影響も加わり、パナソニックのエナジー事業の利益はおよそ4割減少しました。
足元では人員削減を進めており、1万2,000人の人員削減を実施。経費削減を進め、収益改善に努めています。













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