
国立研究開発法人・産業技術総合研究所は、松やにを原料に黒鉛の前駆体となる材料を合成し、黒鉛化できることを実証しました。黒鉛は電気自動車の電池や半導体製造に欠かせない材料で、輸入の約9割を中国に依存する現状を踏まえると、供給網の分散に向けた重要な成果です 。
研究成果は7月1日付で英科学誌「Nature Communications」に掲載されました。産総研は、松やにに含まれる樹脂酸を出発原料に、黒鉛前駆体となるピッチを合成し、無触媒の熱処理で黒鉛化できることを示しました 。実験では、松やに100グラムから約8グラムの黒鉛を得ており、松由来材料でも実用可能性があることを裏付けました 。
黒鉛は軽量で高い電気・熱伝導性を持ち、電池負極材のほか、黒鉛電極、るつぼ、ヒーターなどにも使われます 。一方で、人造黒鉛はこれまで石油や石炭由来の原料に依存してきました 。中国の輸出規制や供給不安が続く中、原料の多様化は日本の産業政策上も急務となっています 。
今回の研究では、松やにに豊富なアビエチン酸を活用し、分子構造を設計することで、黒鉛化に適したピッチへと転換しました 。産総研は、既存の人造黒鉛に比べて化石資源を使わず、脱炭素にもつながると説明しています 。さらに、得られた黒鉛はリチウムイオン電池の負極材料として充放電できることも確認されました 。
実用化への課題
もっとも、研究チームも経済性や性能面には課題が残るとみています 。現時点では、量産コストや安定した品質確保が実用化のカギになります 。ただ、バイオマス由来の炭素材料としては応用範囲が広く、将来的には炭素繊維などへの展開も期待されています 。
産総研は、植物由来分子から黒鉛前駆体を設計する新たな材料開発の道筋を示したとしており、資源制約が強まる中で国内研究の価値を押し上げる成果となりました 。松やには身近な資源ですが、先端産業を支える素材に変える発想が、次世代の供給網づくりにつながる可能性があります 。










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