
人型ロボット「サリー」が、この秋からアメリカ・ニューヨーク州サラマンカ市中央学区の教室に姿を見せます。全米の公立学校としては初めての導入です。あくまで教員を置き換えるものではなく、生徒と教員の双方を支える補助役という位置づけです。導入元のリアルボティクス(Realbotix)CEOは、人型ロボットとAIが教育現場の標準的な道具となる新時代の幕開けだと意義を強調しました。
サリーは、カナダ・トロントに拠点を置くリアルボティクスが手がけた女性型の人型ロボットです。シリコン製の肌と長い茶色の髪を持ち、座った姿勢のまま上半身を動かし、豊かな表情で生徒と会話します。授業では生徒が固有の識別コードを使ってサリーに話しかけると、過去のやり取りを踏まえた個別対応が可能になる仕組みです。
ノートパソコン上のAIアシスタントプログラム「オプティオ」を通じては、宿題の相談や興味のあるテーマの個人レッスン、100以上の言語によるリアルタイム翻訳なども利用できます。導入対象は高校のAI・ロボット工学の授業で、米アップル共同創業者のスティーブ・ウォズニアック氏のカリキュラムが使われる予定です。
導入費用は5万7590ドル(約940万円)で、Realbotix側は通常販売価格9万5000ドル(約1540万円)からの割引価格だと説明しています。
サラマンカ学区のマーク・ビーラー教育長は、学校がテクノロジーを一律に禁止するのではなく、生徒に正しい使い方を教えることが重要だと述べています。かつて教師のメール利用や学校へのインターネット導入が議論になった時期があったとし、今回の試みも当時の議論と同じ延長線上にあるとの考えを示しました。
賛否分かれる導入
サラマンカはアメリカで唯一、全域がネイティブアメリカンの居留地内に位置する自治体です。学区には約1300人の生徒が在籍し、32%がアメリカインディアンやアラスカ先住民、79%が経済的に恵まれない家庭の生徒です。地元の保護者からは、地域にはすでに多くの課題があるのに、AIまで持ち込む発想が理解できないという、導入に否定的な声も上がっています。
一方で懸念されているのが、開発元リアルボティクスの成り立ちです。同社はもともとメタバース上の土地取引を手がけるトロントの企業として出発し、2024年4月に成人向けラブドール「リアルドール」の親会社を買収した経緯があります。会社側は教育事業と成人向け事業の従業員・拠点・技術は分離していると説明していますが、買収の経緯を問題視する見方も根強くあります。
ロボットには顔認証・録音機能を搭載せず、外部ネットワークに接続しない閉鎖環境で稼働させるなど、プライバシー面の対策も講じられていますが、教育現場にどこまで受け入れられるかは今後の検証が必要です。
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