ソフトバンク、「空飛ぶ基地局」を日本で試験運用へ 災害時の通信網確保に向けた次世代インフラ

空飛ぶ基地局「HAPS(High Altitude Platform Station)」が活動する成層圏

ソフトバンクは、無人航空機を活用して成層圏から通信ネットワークを提供する「空飛ぶ基地局(HAPS)」の日本国内での試験的なサービス(プレ商用サービス)を、2026年8月中旬以降に開始すると発表しました。この試験運用は、南海トラフ地震などの大規模な災害を想定したものであり、日本上空で最大10日間ほど飛行させ、実環境での通信状況や地上ネットワークとの干渉などを詳細に確認する計画です。

今回試験に使用される機体は、アメリカのSceye(スカイ)社から提供を受ける飛行船型(LTA型)の無人航空機です。この機体は全長65メートルに及び、ヘリウムガスを利用して浮力を得る仕組みとなっています。機体はアメリカの格納庫から打ち上げられ、太平洋を横断して約2週間かけて日本の上空に到着する予定です。

HAPSは、気流が比較的安定している高度約20キロメートルの成層圏に滞空し、地上のスマートフォンなどの端末と直接通信を行います。1つの機体で最大直径200キロメートルという広大な範囲を通信エリアとしてカバーすることができ、これは一般的な地上の基地局の20倍以上の広さに相当します。米スペースXが提供する通信衛星網「スターリンク」を利用した衛星直接通信サービスと比較しても、HAPSは地上との距離が圧倒的に近いため、遅延が少なく、より大容量の通信が可能です。特に、端末からネットワークへデータを送信する「上り通信」において大きな強みを発揮し、被災地に高品質な通信を届けます。

今回の試験では、高知県や近畿地方、九州、東北地方などの候補地から、気象条件に合わせて最適な実施場所を選定します。すでに今年3月から4月にかけてアメリカで行われたテストフライトでは、誤差1キロメートル以内の範囲に88時間以上とどまる定点滞空に成功しており、その高い飛行性能が実証されています。災害発生時には、まず広域をカバーする低軌道衛星通信で基本的な通信手段を確保し、続いて被災地上空にHAPSを急行させて大容量通信を復旧させるという、多層的な連携体制が想定されています。

激化する開発競争と2027年以降の本格運用への展望

空飛ぶ基地局の実用化に向けては、国内の通信事業者間で開発競争が激しさを増しています。NTTドコモも欧州の航空機大手エアバスの子会社であるAALTO社と連携し、2026年の商用化を目指して研究開発を急いでいます。両社は異なるアプローチを採用しながらも、次世代の通信インフラ市場において主導権を握るべくしのぎを削っています。

ソフトバンクは、今回のプレ商用サービスでの実証結果を踏まえ、2027年以降にHAPSの本格的な運用を開始する計画です。平常時には日本の上空に機体を待機させておき、大規模なイベント開催時などで局地的に通信量が急増するエリアに移動して、一時的に通信容量を補完するといった柔軟な運用も視野に入れています。

将来的にHAPSは、災害対応やへき地の通信環境改善に加え、ドローンや空飛ぶクルマの本格的な普及を下支えするための「空の通信網」を構築する役割も期待されています。地上のネットワークと宇宙の衛星通信、そして成層圏のHAPSを融合させた3次元のネットワークが構築されることで、どこにいてもつながり続ける新たな社会基盤の実現が着実に近づいています。

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