
政府は28日、首相官邸で犯罪対策閣僚会議を開き、ストーカー被害が深刻化するなか、緊急対策を打ち出しました。ストーカー事件は被害者が繰り返し接触を受けるなど被害が長期化しやすく、警察への相談や禁止命令だけでは十分に防ぎきれないケースが課題となっています。
実際、2025年のストーカー行為等への禁止命令は3037件に上り、2000年の同法施行以来最多を記録しました。件数の増加は、既存の対応だけでは被害者の安全を確保しきれていない実態が浮き彫りになっています。
政府は緊急対策の柱として、加害者へのGPS機器の装着の義務化を検討する方針です。GPS装着の対象としては、接近禁止命令を受けた加害者のうち特に危険性が高いケースが想定されており、加害者が被害者に一定距離まで接近した際、被害者のスマートフォンなどに通知する仕組みも導入します。
違反時の罰則も検討課題に含まれました。加害者が再び接触を試みる前に異変を察知できれば、被害の未然防止につながる可能性があります。ただし、対象範囲をどこまで広げるかや、誤作動への対応など、実務上の論点も少なくありません。
先行して制度を導入した韓国では2023年、足首に腕時計型のGPS機器を装着させ、被害者まで約2キロ以内に近づくと通知する仕組みを整えており、政府は今後こうした事例を参考に技術面や運用面の検討を進める方針です。
あわせて、一定の加害者に治療やカウンセリングの受診を義務付ける案も盛り込まれました。警察は禁止命令を受けた加害者に治療の受診を働きかけていますが、2024年に治療につながったのは対象3271人のうち184人、割合にして5.6%にとどまっています。行動の抑止だけでなく、加害の背景にある問題への介入を重視した措置で、受け皿となる医療機関の確保も今後の課題です。
重大事件を受け対策前進
今回の対策強化の背景には、今年3月に東京都豊島区の商業施設で起きた事件があります。元交際相手の男は事件の約3カ月前にあたる2025年末にストーカー規制法違反容疑で逮捕され、26年1月の略式起訴後に釈放されました。警視庁は釈放前日に禁止命令を出しましたが、その後も男の行動を止められず、3月に勤務中だった21歳の女性を刺殺しました。
高市総理は会議で「被害者の保護措置の強化と、加害者対策の強化の両面からの対策が必要」と強調し、実効性のある新たな仕組みづくりが急務だとの考えを示しています。
自民党の治安・テロ・サイバー犯罪対策調査会は5月27日、GPS装着や更生プログラム受講の義務化に関する提言を高市総理に提出しており、今回の緊急対策はこの提言を踏まえたものです。政府は今後、ストーカー規制法の改正も視野に制度の具体化を進める方針で、実効性とプライバシー・人権への配慮をどう両立させるかが焦点となります。












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