
夏の訪れとともに、熱中症への警戒が必要な季節がやってきます。総務省消防庁の報告によると、全国で6月から9月の期間に熱中症で救急搬送された方は、2010年以降大きく増加し、特に非常に暑い夏となった2018年は92,710人、次いで2019年が66,869人、2020年が64,869人となっています。
救急搬送者には高齢者が多いものの、実は、10代も熱中症にかかりやすいことをご存じですか。日本スポーツ振興センターの調査でも、6~18歳の熱中症発症数は増加傾向にあり、死亡に至らないものの、救急搬送される割合が多くなっています。
大切な子どもたちを深刻な健康被害から守るため、熱中症の正しい知識を身につけましょう。
熱中症と子どもの体
10代に熱中症が多いのは、体の特徴と生活習慣に理由があります。
1.熱中症の定義
熱中症とは、暑い環境が原因となって発症する、皮膚の障害などを除外した健康障害の総称です。主な原因は、過度の体温上昇と脱水です。
私たちの体は、汗をかいたり皮膚から熱を逃がしたりして体温を一定に保っていますが、体温調節機能が高温多湿な環境下でうまく働かなくなり、体の中に熱がこもってしまうことでさまざまな症状を引き起こします。
2.子どもに特有な生理的特徴
子ども、特に10代の若者が熱中症になりやすいのには、特有な体のつくりに理由があります。
子どもは、体温調節機能がまだ未熟です。思春期前は汗を出す汗腺の密度は高いものの、一つの汗腺から出る汗の量が少ないため、汗による体温を下げる能力が大人に比べて劣ります。また、体に熱がこもりやすい特徴もあります。成人と比較して体重あたりの体表面積が大きく、外の気温の影響を受けやすいのです。さらに、体重あたりの熱の産生量が多く活動量も多いため、体内で熱が生み出されやすくなっています。
身長が低い分、大人よりも地面からの照り返し(輻射熱)の影響を強く受けます。ある調査では、気温30.9℃の日に大人の顔の高さが32.9℃だったのに対し、ベビーカーの高さは36.4℃に達したという結果もありました。
3.10代を取り巻く環境
10代特有の生活習慣もリスクを高める要因です。部活動や体育の授業など、強度の高い運動をする機会が多いのが挙げられます。活動に夢中になるあまり、のどの渇きや体のだるさといった体の変化を自覚しにくいことも少なくありません。
また、近年は冷房の効いた室内で過ごす時間が増え、体が暑さに順応できていない子どもが増えています。そのため、梅雨の晴れ間や梅雨明けなど、急に気温が上昇した日に熱中症のリスクが高まる傾向にあります。
熱中症の重症度と治療
熱中症に小児特有の重症度分類はなく、成人と同様の基準が用いられます。症状の重さによって対応が大きく異なるため、正しい知識を持つことが重要です。
最新のガイドラインでは重症度を4段階に分類しています。

Ⅰ度であっても症状が改善しない場合や、Ⅱ度以上では速やかに医療機関を受診する必要があります。
熱中症を予防する5つの鉄則
熱中症は正しい知識で予防できます。以下の5つの鉄則を守りましょう。
- こまめな水分・塩分補給
- 適切な休憩
- 服装の工夫
- 食事と睡眠
- 暑熱順化
のどが渇く前に飲むのが基本です。運動時は20~30分ごとにコップ半分~1杯程度の水分・塩分を補給しましょう。
環境省「熱中症予防情報サイト」にある暑さ指数(WBGT)も参考にしましょう。「警戒」レベル(WBGT25℃以上)では定期的な休息を、「危険」レベル(WBGT31℃以上)では運動は原則中止を検討してください。
衣類は、吸湿性や速乾性に優れた素材を選びましょう。屋外ではつばの広い帽子をかぶったり、日傘を使ったりして直射日光を避けることが有効です。
1日3食バランスの良い食事をとり、体調を整えることが基本です。特に朝食を抜くとリスクが高まります。
また、睡眠不足も大敵です。寝苦しい夜は無理せずエアコンを28℃程度に設定するなど、快適な睡眠環境を保ちましょう。赤ちゃんの適温は、大人とほぼ同じと考えて問題ありません。風量は弱、赤ちゃんに直接風が当たらないように注意し、タイマーは少なくとも3 ~4時間は使用しましょう。
本格的な夏が来る前から、やや暑い環境で30分程度のウォーキングなど「ややきつい」と感じる運動を習慣にし、体を暑さに慣れさせておくのが有効です。
熱中症の回復後の過ごし方
もし熱中症にかかってしまった場合は、回復後も注意が必要です。
めまいやだるさなどの症状が完全に回復していれば、翌日から普段通りの学校や仕事に行っても問題ありません。しかし、熱中症になったということは、その時の環境や行動に再発のリスクが潜んでいるということです。予防策を見直し、同じことを繰り返さないようにしましょう。
もし、翌日になっても体のだるさや食欲不振といった症状が続く場合は、無理をせず医療機関を受診してください。また、熱中症は後遺症が残る可能性も指摘されています。重症の場合はもちろん、軽症でもまれに、倦怠感や頭痛が長期間続いたり、脳などの中枢神経に障害が残ったりすることがあります。
熱中症から子どもを守ろう!
熱中症は、特に活発に活動する10代にとって、決して他人事ではありません。子ども特有の体の特徴から、大人が思う以上にリスクは高まっています。大切なのは、日頃からの予防です。水分補給や休憩、服装の工夫といった基本的な対策を徹底しましょう。
もし、子どもの様子が「おかしいな」と感じたら、軽く考えず、速やかに涼しい場所で休ませ、体を冷やすなどの応急処置をしてください。判断に迷うときや、呼びかけへの反応が鈍いなど重症度が高いサインが見られる場合は、救急車を呼ぶか、医療機関を受診してください。大人の正しい知識と行動が、子どもたちの健康な夏を守ります。
参考文献
1.環境省熱中症予防情報サイト|3.熱中症はどれくらい起こっているのか
2.総務省|令和6年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況
3.田中英登,江口潤,斉藤武比斗,他. 子どもの熱中症予防のための夏休み時の外遊び及びスポーツ活動時刻に関する調査研究―小学生及びスポーツ指導者の調査から―.神奈川体育研究 2015;48:21-28.
4.小児における熱中症
5.日本救急医学会|熱中症診療ガイドライン 2024.
6.日本生気象学会|「日常生活における熱中症予防指針」Ver.3.1
7.日本気象協会|熱中症について学ぼう.




が国内外で流行?-1-150x112.jpg)





-150x112.png)
-150x112.jpg)






-300x169.jpg)