
記録的な熱波と少雨の影響で、欧州で2番目の長さを誇るドナウ川の水位が観測史上最低を更新しています。ハンガリーの水管理当局によると、首都ブダペスト市内を流れるドナウ川の水位は、7月29日の午後4時時点でわずか24センチメートルまで低下しました。
この深刻な渇水は、ハンガリーのエネルギー供給に甚大な影響を及ぼしています。国内の電力需要のおよそ半分を賄っている同国唯一の原子力発電所、パクシュ原子力発電所が、1982年の運転開始以来44年で初となる全面停止に追い込まれる見通しとなりました。同原発は原子炉の冷却にドナウ川の水を利用していますが、水位が極端に下がったことで取水ポンプの吸い込み口が水面より高くなってしまい、冷却水を正常に取り込めなくなる恐れがあるためです。
ハンガリーのマジャル首相は8月2日から3日にかけて、国内の発電量の約半分を占める同国唯一のパクシュ原発について、稼働を全面停止させる可能性があると発表しました。ドナウ川の水位低下により、原子炉の冷却に十分な水が確保できないためです。また、今後24時間から72時間以内に原発が全面停止する見通しであることを明らかにしました。全面停止となれば1982年の運転開始以来初めての事態となり、深刻な国家的エネルギー危機が懸念されるため、政府は国民に向けて自主的な節電への協力を呼びかけています。
原発の運営会社は、全面停止後も原子炉の冷却に必要な水自体は確保されており、安全性に問題はないと説明しています。また、現在取水設備の改良工事を進めており、数年以内にはさらに低い水位でも運転を継続できるよう対策を講じる方針です。欧州各地では連日、記録的な猛暑が続いており、水位の低下は少なくとも週明けまで続くと予測されています。
観光業への打撃と周辺国に広がる異常気象の連鎖
ドナウ川の水位低下がもたらす影響は、エネルギー部門だけにとどまりません。ブダペストの主要な観光資源であるドナウ川クルーズでは、水位不足により一部の船が出航できなくなり、観光ツアーの中止や船の座礁が相次いで報告されています。市民の足である対岸を結ぶ連絡船の運航も停止に追い込まれ、地域経済や日常生活へのダメージが深刻化しています。
さらに、周辺の欧州諸国でも異常気象による連鎖的な被害が広がっています。ルーマニアでは、ドナウ川の水量が過去30年間で最も低い水準を記録しました。フランスでは、猛暑による河川の水温上昇を理由に、仏電力公社(EDF)が原子炉3基の運転を一時停止する事態となっています。また、ドイツのライン川でも水位低下によって貨物船の積載量が制限されており、物流網に深刻な打撃を与えています。
このように、各国の重要な水路や発電施設に多大な負荷がかかっています。気候変動に伴う極端な気象現象が、欧州全体の物流網やエネルギー供給網の根幹を脅かす事態となっており、各国当局はさらなる水位低下に向けた警戒とインフラ強靱化への対応を急いでいます。






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