
韓国国会は本会議を開き、検察庁の後継組織として10月に発足する「公訴庁」から補完捜査権を含む一切の捜査権を奪う刑事訴訟法改正案を可決しました。採決では在席178人のうち賛成175人、反対2人、棄権1人という大差で成立し、1948年の検察庁法制定以来78年にわたり検事が保持してきた捜査権限が完全に除外される歴史的な転換点となりました。
韓国では2025年に政府組織法が改正され、検察庁を廃止して起訴業務に特化する「公訴庁」と、警察と同様に行政安全省が所管する「重大犯罪捜査庁」に機能を分離する方針が決定されていました。この流れを受け、与党「共に民主党」は検事が警察から送致された事件について自ら補完捜査を行う根拠となっていた刑訴法第196条の削除を目指し、7月9日にタスクフォース案として法案を発議していました。
与党は検察改革を長年の党の目標として掲げてきた背景があります。革新系の盧武鉉元大統領が検察の捜査を受けて自ら命を絶った経緯から、同党は検察の権限集中と政治的捜査の温床を問題視し、捜査と起訴の分離を強く推進してきました。今回の改正では、犯罪捜査の主体を司法警察官に一元化し、検事は公訴の提起と維持に専念する体制へと移行します。あわせて、検事が警察に補完捜査を要求した場合は原則1カ月以内(最大1カ月延長可)に履行することを義務づけ、不十分な捜査が懸念される場合には上級の捜査機関を指定して要求できる仕組みも整備されました。さらに、重大な違法捜査や訴追裁量権の著しい逸脱が確認された際には、裁判所が公訴自体を棄却できる規定も新設されています。
光州の事件で浮上した懸念、与党は方針を貫徹
法案審議の過程では、捜査力低下への不安も表面化しました。5月に韓国南西部・光州で発生した女子高校生殺害事件では、被告の父親である現職警察官が捜査チームの協力を得て証拠隠滅を図った疑いが判明し、警察捜査の不透明さが社会問題化しました。捜査チーム長は証拠隠滅容疑で緊急逮捕される事態にまで発展し、女性団体や法曹関係者からは「検察による補完捜査というけん制機能を残すべきだ」との声が強まっていました。
こうした反対論に対し、与党は検事の捜査権を一切認めない当初方針を最終的に貫徹しました。検察庁が2026年10月2日に廃止され、公訴庁と重大犯罪捜査庁が新体制で始動することを見据え、制度上の分離を仕上げる狙いがあります。今後は性暴力や児童虐待などの重大犯罪に限り、警察ではなく重大犯罪捜査庁に補完捜査を要求できるようにする追加の法改正も検討される見通しで、韓国の刑事司法制度は歴史的な再編の最終段階に入っています。












-300x169.jpg)