
米国防総省は、米国の航空宇宙・防衛大手であるロッキード・マーチンに対し、今後7年間で地対空ミサイルシステム「パトリオット」の生産能力を大幅に引き上げるための契約を新たに発注しました。この契約総額は最大で590億ドル(約9兆6500億円)に達し、同システムの生産量を現在の3倍に拡大することを目指しています。本件は、今年4月に結ばれた47億ドル規模の初期契約を基盤としており、それに538億6000万ドル分を追加することで長期的な増産体制を確約するものです。
増産の主な対象となるのは、パトリオットシステムの中でも最新鋭かつ最も迎撃性能が高い「パトリオット・アドバンスト・ケイパビリティー3・ミサイル・セグメント・エンハンスメント(PAC-3MSE)」です。同ミサイルは、弾道ミサイルや巡航ミサイル、ドローンなどを高精度で撃墜する能力を持ちますが、1発あたりのコストが約400万ドルと非常に高額であることでも知られています。米国やイスラエルへの報復として、イランが中東全域で数千発規模の攻撃を実施した際、米軍や同盟国の防空の要として大量に消費されました。イランとの紛争においてミサイルが大量に消費されたため、米軍は軍需物資の備蓄増強を急務としています。
この深刻な備蓄不足を解消するため、計画では年間の生産能力を現在の約600発から、2030年までに約2000発へと引き上げます。これに伴い、アーカンソー州カムデンにある生産ラインで新たに650人の従業員を雇用し、製造部門全体の人員を1850人規模へと拡大する見込みです。
ロッキード・マーチンが大型の複数年契約を受注するのは、今後7年間で高高度防衛ミサイル(THAAD)の生産能力を4倍に引き上げる最大350億ドルの契約に続き、今回で2件目となります。これらの一連の巨額投資は、米国の兵器サプライチェーンを平時から戦時体制に近いレベルへと引き上げようとする方針の表れです。
国防生産法の発動と異業種連携による防衛産業基盤の強化
急増する兵器需要に対し、従来の防衛産業の生産能力だけでは対応が困難になりつつある中、トランプ大統領はホワイトハウスの重点課題として軍需物資の備蓄増強を掲げています。その一環として、民間企業に重要物資の増産を要請できる国防生産法を発動しました。これにより、請負企業間での連携を阻んでいた障害が取り除かれ、より幅広いサプライチェーンの構築が可能となっています。
実際に米国防総省は、既存の防衛産業の枠組みを超え、民間製造業者に対してもミサイル生産への技術提供を強力に促しています。ロッキード・マーチンは最近、米自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)と兵器生産に関する支援策を模索することで合意に達しました。
さらに、部品供給を担う下請け企業もこの大規模な増産体制に呼応しています。両迎撃ミサイル向けに固体ロケットモーターを供給するL3ハリス・テクノロジーズも今週、生産の加速計画を発表しました。政府、防衛大手、そして民間製造業者が一体となって兵器生産を加速させることで、軍当局は消費されたミサイルの補充とサプライチェーンの再構築を急ぐ構えです。












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