
警察庁と金融庁は8月6日、国内の暗号資産交換業者で構成される一般社団法人日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)へ宛てて、仮想通貨を悪用した詐欺被害を防ぐための対策をさらに強化するよう連名で要請を行いました。事業規模を問わず、すべての暗号資産交換業者が対象となります。
今回の要請の背景には、SNSを通じた投資勧誘やロマンス詐欺の被害が急拡大している実態があります。特殊詐欺の被害金が暗号資産交換業者の口座宛てに送金され、追跡が困難な暗号資産に換えられる事例が相次いでいるためです。警察庁のまとめによると、2026年上半期の特殊詐欺全体の被害額は1,816.2億円に上り、前年同期比で618.8億円増加するという深刻な状況となっています。手口別に見ると、SNS型投資詐欺の被害額が797.9億円(前年同期比444.9億円増)、ニセ警察詐欺が507.9億円(同108.9億円増)と大きく膨らんでいます。
提示された対策は11項目に及びます。特に中核となるのが、法定通貨の入金後や暗号資産の購入後に一定期間の出庫制限を設ける措置です。また、出庫先アドレスの事前登録制を導入し、新規登録したアドレスへの出庫も一定期間制限することが求められました。さらに、顧客の属性や保有資産に応じた出庫限度額の設定、直近の詐欺手口を反映した取引モニタリングの強化、なりすましが疑われる場合の多要素認証の必須化なども盛り込まれています。システム対応が必要な場合は、計画的な実施が容認されています。
こうした実務面での要求水準引き上げと歩調を合わせるように、金融庁は8月7日付で組織再編を実施し、専管部署となる暗号資産・ステーブルコイン課を新設しました。従来の参事官室から独立した課に格上げすることで、規制の企画立案と監督機能を一元化し、体制を強化しています。
ネット上では「詐欺対策は急務だが、仮想通貨のメリットである送金の即時性が失われるのは不便だ」「取引所ごとに制限が異なると混乱しそう」といった、安全性と利便性のバランスを懸念する意見も寄せられています。
SNS事業者への対策要請と関連法改正による包囲網の形成
暗号資産を用いた詐欺を防ぐため、入り口となるプラットフォーム側への対策も同時に進行しています。8月7日、デジタル庁や警察庁など7府省庁は合同で、Google、LINEヤフー、MetaなどSNSを運営する大規模事業者5社に対し、ディープフェイク等を悪用した「なりすまし詐欺広告」への対策強化を要請しました。広告主に対するマイナンバーカード等を用いた本人確認の徹底や、広告の透明性向上が求められています。
さらに、警察庁は「送金バイト」を募るSNS投稿などを新たに削除要請の対象に追加する方針を明らかにしています。また、2026年7月10日に施行された改正犯罪収益移転防止法により、こうした「送金バイト」を有償で請け負う行為が違法として禁止され、資金洗浄の実行役に対しても2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金などの罰則が科されるようになっています。
取引所における水際対策、SNS広告の規制、そして法律による罰則強化と、政府は多角的なアプローチによって、深刻化する詐欺被害を食い止めるための強固な包囲網を築きつつあります。












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