
関東信越国税局は8月7日、茨城県龍ケ崎市にある竜ケ崎税務署に所属する松尾康成職員(25)を同日付で懲戒免職処分にしたと発表しました。この元職員は、公営ギャンブルである競艇で得た多額の払戻金を申告せず、約1億3500万円の所得税を脱税した疑いが持たれており、同局は所得税法違反の容疑でさいたま地検へ刑事告発しました。税務行政の根幹を担う「税の番人」による巨額の脱税事件は、社会に大きな衝撃を与えています。
国税当局の発表によりますと、元職員は2023年から2025年までの3年間にかけて、競艇で総額約3億3400万円の無申告の所得を得ていました。公営ギャンブルの払戻金は原則として「一時所得」に分類されるため、規定の額を超えれば税務申告を行う義務があります。しかし、元職員は税務署員としての専門知識を持ち合わせていながら、意図的に無申告を貫いていました。
事件の背景には、常軌を逸したギャンブルへの依存がありました。元職員は勤務時間中にもかかわらず、自身のスマートフォンを使用して競艇サイトにアクセスし、2672回にわたって舟券を購入していました。さらに勤務時間外の取引も含めた舟券の総購入額は、約8億6000万円という莫大な金額に上ります。勤務中の舟券購入にくわえ、払戻金の引き出しや入出金などの行為を合わせると計7099回にも上り、業務を蔑ろにしてギャンブルに没頭していた実態が明らかになっています。
これほどまでの巨額な資金の出所も極めて悪質なものでした。元職員は、以前に勤務していたさいたま市の浦和税務署で担当した税務調査を通じて、埼玉県内の高齢女性と個人的に親しくなりました。調査終了後の2022年11月から2026年1月にかけて、元職員はこの女性の自宅を頻繁に訪れては、「家族に仕送りをしている」「飲み会幹事の立て替え金が必要」などと虚偽の理由で同情を誘いました。結果として、小遣いや立て替え金などの名目で女性から引き出した受領額は総額約1億5000万円に達しており、これらの資金がそのまま競艇につぎ込まれていたとみられています。
詐欺容疑でも刑事告発、税務行政の信頼を損なう極めて悪質な事態
元職員の行為は、脱税や現金の無心にとどまりませんでした。被害に遭った高齢女性に対し、「以前に提出した修正申告書に誤りがあり、新たに納めるべき税金が発生する」と嘘をつき、偽の文書を示して現金80万円余り(約86万円)をだまし取っていたことも判明しています。関東信越国税局は、この行為が詐欺に当たるとして、詐欺容疑でもさいたま地検に刑事告発しました。なお、現金受領に伴う税額の減免といった税務上の便宜供与は確認されていません。
不祥事発覚の端緒は、元職員が消費者金融から借金をしている疑いが浮上したことでした。過去にもギャンブル問題で指導を受けており、内部調査を進めた結果、今回の事件が明るみに出ました。元職員は「被害者や家族に大変申し訳ない。一生かけてでも返す」と供述しています。
さいたま市内での記者会見で、同局の首藤好明総務部長は「税務行政に対する信頼を損なうもので誠に申し訳ない」と深く謝罪しました。税の番人による前代未聞の不祥事は、国家の徴税システムへの信頼を根底から揺るがす事態となっており、今後、被害者から国に対する損害賠償請求に発展する可能性も指摘されています。












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