
子どもがうそをついたとき、「将来、とんでもないうそつきになることやもしくは問題行動につながるのでは…」「このまま非行に走るのでは…」と不安になってしまう保護者の方もいるのではないでしょうか。
それまで素直でうそなどつかなかった子どもが、自分を守ろうとしてうそをつく姿を見てしまうと、不安になってしまうのは仕方がないことだと言えます。
しかし、子どものうその多くは一時的な成長の証であり、過剰に心配する必要はありません。今回は、子どもの「うその頻度の変化」が将来の行動にどう関連しているのかを、約13年間にわたり追跡調査した研究をご紹介します。
子どものうその発達における変化と、成人期のパーソナリティや犯罪活動との長期的な関連性を解明
今回紹介する文献は、2026年5月に『Development and Psychopathology』に掲載された、カナダのマギル大学に所属するVictoria Talwar氏らの研究グループによる論文です。
子どものうその発達における変化と、成人期のパーソナリティや犯罪活動との長期的な関連性を解明した貴重な文献となっています。
多くのうそは心配無用! 重要なのは変化のパターン
研究グループは、幼少期の多くの子どものうそは、将来の問題行動にはつながらないことを明らかにしました。
研究では、子どものうその変化パターンを特定することで、将来的に問題化しそうなうそを早期に見つけ、長期的な介入につなげられる可能性を示唆しています。
3,017人の長期追跡で判明した「うその減少」と「要注意サイン」
【研究背景と目的】
うそをつく能力は幼児期に自然と芽生えますが、大半の大人や子どもは頻繁にはうそをつきません。しかし、一部の「うそをよくつく問題のある人」がどのような成長の軌跡をたどるのか、生涯を通じた長期データは不足していました。
そこで本研究は、6歳から19歳にかけてのうそをつく頻度の変化(軌跡)を特定し、幼児期の性格や成人初期の反社会的行動・犯罪歴とどう関連するかを解明することを目的にしました。
【研究方法】
1986年度と1987年度にカナダ・ケベック州の幼稚園に通っていた児童3,017人(女子47.2%、男子52.8%)を対象に、6歳から19歳までという長期間の追跡調査を実施しました。親と教師による多角的なうその報告や、22歳での面接による精神症状、生涯犯罪活動(13歳から17歳、18歳から25歳の期間)について、統計モデルを用いて分析しました。
【研究結果】
多くの子どもは、成長過程で一時的にうそが増えても、思春期以降(19歳に向けて)自然と減少する軌跡をたどるため、将来の問題行動にはつながりません。一方で、幼少期から攻撃性や衝動性のレベルが高い子どもはうそをつき続ける傾向にあり、「高頻度で何年も続くうそ」の軌跡は、成人期の反社会性パーソナリティ障害や犯罪歴と関連していることがわかりました。
子どものうそを見守るべき基準
本研究にはいくつかの注意点もあります。まず、うその評価が限定的な3段階尺度に依存しており、複雑な行動を捉えきれていない点です。測定精度の制約から、軌跡の小さな変化は「うその頻度」ではなく、周囲の主観の違いを反映している可能性もあるため、解釈には慎重さが必要です。
また、社会経済的地位や他の心理的問題(内在化・外在化問題)といった要因を考慮していない限界もあります。そのため、「うそ=問題行動」と短絡的に結びつけるのではなく、本当に注意すべきなのは、幼少期からの「攻撃性や衝動性を伴う、高頻度で何年も続くうそ」であるという冷静な判別が重要です。
うそは子どもの心の成長の証
子どもがうそをつくのは、相手の気持ちを想像したり先を見通したりする脳や心が順調に育っている証拠でもあります。ですから、うそに過剰反応して厳しく責め立てる必要はありません。
ただし、一部の「うその頻度が高いまま」、「うそが増え続ける」経過をたどる子どもは、攻撃性や反社会的行動など後の問題と結びつきやすいことがわかりました。そういった子どもが何らかの生きづらさを抱えているサインかもしれません。「うそをついてはダメ」と叱るのは簡単なことですが、うそをつくことを厳しくしつけると、より高度なうそをつくことや問題行動に進展することがわかっています。
うそをついたことで子どもを否定するのではなく、どうしてうそをついたのか考えてみることや大人の視点で寛容に次は正直に話してくれることを期待して子どもの話に耳を傾けてみることも必要かもしれません。






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