
有事における通信インフラの喪失を想定し、台湾当局は8月10日、スマートフォンの通信速度を制限する初の大規模テストを中部エリアで行いました。本件は年に1度実施される定例軍事演習「漢光」と連動した防空訓練の一環に位置づけられています。中国による武力侵攻をはじめ、高度なサイバー攻撃や、台湾を外部と繋ぐ海底ケーブルの意図的な切断などによって引き起こされる、大規模かつ深刻な通信障害を想定した実践的な内容となっています。
午後2時半から30分間にわたり、人口約290万人を抱える中部最大都市の台中市などにおいては、けたたましい防空サイレンが鳴り響き、屋外にいた市民らが地下駐車場などの指定された避難場所へ一斉に移動する訓練が行われました。通信施設が敵対勢力の攻撃を受けたという緊迫した想定の下、通信制限が実施されたことで、現地から中継を行っていたテレビ局はネット接続が不安定になる様子を報じました。台湾メディアの報道によれば、10日の訓練中には広く普及する通信アプリ「LINE」において、実際に写真の送受信ができなくなるなどの影響が確認されています。
敵対的勢力によるインフラ攻撃や海底ケーブル切断に伴う通信途絶の再現を目的とした8月10日の中部地域での訓練に続き、13日には、首都機能を擁する台北市など北部地域でも同様の訓練が実施される予定です。北部での訓練は、首都圏における有事の通信バックアップ手段の検証と国民の耐性向上を兼ねています。中部と北部を合わせると台湾の総人口の7割超に当たる、1700万人余りが影響を受けるかつてない規模の演習となります。政府は今回の制限訓練を通じて、国民に対して通信手段の分散や代替手段の確保がいかに重要であるかを広く周知し、万が一インフラが麻痺した際における社会全体の耐性と、市民一人ひとりの危機対応力を一段と高める狙いを持っています。
有事の臨戦対応能力を問う軍事演習とトップの決意
今回の通信制限訓練と連動して、台湾軍による定例の軍事演習「漢光」も8月5日から14日の日程で大々的に行われています。実際の海岸の訓練場などでは、敵部隊の一部が上陸したという最悪の事態を想定し、特殊作戦突撃艇と最新の無人機が連動して効果的に反撃・攻撃する手順などが実演されました。
軍の最高司令官である頼清徳総統は自ら演習の現場を視察し、高速ミサイル艇上から乗組員らに対して無線で直接訓示を行いました。頼総統は、本演習の最大の狙いが「指揮連携と臨戦対応能力、国土を防衛する能力を検証することにある」と力強く強調しました。
民間インフラへのサイバー攻撃も視野に入れた今回の包括的な演習は、台湾当局が有事の際の情報伝達網の維持と、社会全体の耐性強化を急務と位置づけていることを示しています。
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