
おはようさん。リーゼント刑事こと秋山です。
今年の暑さは、本当にこたえますね。
外に出るだけで汗が止まらず「今年の暑さはさすがにこたえるなぁ」と感じている方も多いのではないでしょうか。そんな暑い毎日ですが、最近は熊本で大きな災害も起き、多くの方が不安な日々を過ごしています。被害に遭われた皆さまには心からお見舞い申し上げます。
私は42年間、警察官としてさまざまな現場を見てきました。その中で強く感じたことがあります。災害は自然が起こします。ですが、そのあとに起きる犯罪は人が起こします。家が崩れ、避難生活が始まり、不安でいっぱいの人たちを狙う悪い人は、残念ながら必ずいます。
だから、私は、防災と防犯は別々ではなく、いつも一緒に考えて欲しいと思っています。今回は、災害のあとに実際に起きた事件や、私が刑事時代に経験したことを交えながら「自分や家族を守るために大切なこと」をお話したいと思います。
<目次>
阪神・淡路大震災に乗じて弱者を狙う卑劣な犯行

1995年1月17日5時46分。阪神・淡路大震災が発生しました。テレビに映し出された高速道路の倒壊や燃え続ける街並みは、今も忘れることができません。
私は応援部隊として現地へ向かい、被災地で活動しました。そこは、言葉に言い表せないほど悲惨な光景が広がっていました。家を失った人、家族を探し続ける人、避難所で寒さと不安で耐える人たち…。本来ならだれもが助け合わなければならない状況です。
しかし、その一方で、災害に乗じて犯罪を繰り返す者たちもいました。壊れた家に侵入する空き巣。店先に置かれた商品を持ち去る泥棒。タイヤ販売店から大量のタイヤをトラックに積み、そのまま逃走する者までいました。「こんな時に、なぜ…」現場で何度もそう思いました。
避難所には、小さなお子さんから高齢に方まで、多くの人が身を寄せ合い、不自由な生活を送っていました。誰の顔にも疲れと不安がにじんでいたのを、今でも忘れることができません。
ところが、その混乱に乗じて犯罪を繰り返す者がいたのです。私が特に忘れられないのは、女性や子どもが狙われた性犯罪でした。避難所は決して安全な場所とは限りません。着替えやトイレ、夜間の移動、一人になる時間…。そうした一瞬の隙を狙う卑怯な犯罪が実際に起きました。
災害が起きると、警察も消防も自衛隊も、まずは人命救助を最優先に動きます。そのため、普段のように防犯へ十分な目が行き届かない時間がどうしてもうまれます。その隙を知っていて、行動する人間がいるのです。
私が刑事として現場に立ち、災害の被害者がさらに犯罪の被害者になるという現実を何度も見てきました。これは自然災害ではありません。人の弱さにつけこみ、人の苦しみを利用する、れっきとした犯罪です。
だから、私は災害が起きたら「食料はあるか」「水はあるか」だけでなく、「子どもは一人で行動していないか」「女性が一人になる場所はないか」「夜は必ず誰かと行動しているか」まで考えてほしいのです。
災害は防げなくても、犯罪は周りの人との声掛けや少しの注意で防げることがあります。家族を守るために大切なのは、「一人にしない、目を離さない、皆で守る」私はこれが、災害時の防犯で最も大切なことだと思っています。
能登半島地震で騙された「嘘のSOS」

ところが、時代が変わると、犯罪も姿を変えました。現場で起きる犯罪だけではありません。今ではスマートフォン1台で、人の善意を利用する時代になってしまったのです。その現実を、わたしは能登半島地震で思い知りました。
2024年1月1日午後4時10分。能登半島地震が発生しました。一人でも多くの命が助かって欲しい。そんな思いで情報を見続けていた私のX(旧Twitter)のダイレクトメッセージが届きました。
「家が倒壊しました。助けてください」
切羽詰まった内容でした。そこには詳しい住所や名前も書いてありました。元刑事として「もし本当なら、一秒でも早く助けなければならない」そう思い、私は何度も何度も現地を管轄する警察署へ連絡しました。やっと担当の警察官とつながり、「すぐに現場を確認します」という返事をいただきました。
ところが、その後、警察官が現場を確認しに行った結果、家は倒壊しておらず、救助が必要な状況でもありませんでした。さらに分かったのは、その投稿は、多くの人の同情を集めてフォロワーや「いいね」を増やし、それを利益につなげることが目的だったということです。
騙されたのは私だけではありませんでした。「かわいそうな人がいます。秋山さん、助けてあげてください」そんな善意のメッセージが、別の方々からも私のもとへ届いていました。皆さんは悪気などありません。「助けたい」という優しい気持ちで連絡をくださったのです。
しかし、その優しさが利用されてしまったのです。災害が起きると、人は「誰かを助けたい」という気持ちになります。その温かい心につけ込み、嘘の情報を流して人を騙す者が、残念ながら現実にいます。刑事として数えきれないほどの嘘を見抜いてきたつもりでした。それでも、この時は騙されました。
だから皆さんにお伝えしたいのです。災害時は、善意で動くのではなく、一度立ち止まり、その情報が本当に正しいのかを確認してください。嘘の情報は、救える命を遠ざけることがあります。本当に助けを必要としている人への救助が遅れることもあります。
そして何より、人の優しさを利用して、自分の利益を得ようとする行為は、決して許されるものではありません。ただ、人を助けたいという気持ちは、絶対に失ってほしくありません。
だからこそ、災害時ほど「急ぐ」と「確認する」を両立して欲しいのです。その冷静な行動が、自分だけでなく、本当に助けを必要としている人を守ることにつながると、私は強く感じています。
自分の命を守れる人が、大切な人の命も守れる

最後に、私から皆さんにお願いがあります。難しいことではありません。災害が起きた時、どうかこれだけは忘れないでください。難しいことではありません。ほんの少し意識するだけで、自分や大切な人を守れることがあります。
・情報は「早く」ではなく「正しく」
SNSで見た情報は、まず公的機関や報道機関で確認してください。善意で拡散した情報が、救助活動の妨げになります。
・「大丈夫だろう」は禁物です。
災害時は普段なら起きないような事件や詐欺も起こります。「自分は大丈夫」と思わない事が、自分を守る第一歩です。
・「困った時ほど一人で行動しない」
災害時は判断力も体力も落ちています。女性や子ども、高齢者はもちろん、誰でも一人で動かず、できるだけ周りの人と行動してください。
・「うますぎる話」は必ず疑う
「無料で修理します」「今すぐ点検します」「義援金を集めています」
災害時には、善意を装った悪質な業者や詐欺が必ず現れます。その場で契約や振り込みはせず、一度家族や警察に相談してください。
・家族との約束を決めておく
災害が起きた時、「どこへ避難するか」「連絡が取れなかったらどこで会うか」「子どもだけになったらどうするか」これを事前に決めておくだけで、犯罪に巻き込まれる危険も減ります。
災害は自然が起こします。しかし、その後に起きる犯罪は、人が起こします。自然を止めることは出来ません。しかし、犯罪は皆さん一人ひとりの備えと行動で防げるものがあります。
「自分の命を守れる人が、大切な人の命も守れる」
どうか、この言葉を心に片隅に置いておいてください。その小さな備えが、いつか皆さんや、大切な家族の命を守ることにつながると、私は信じています。


















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