
ロシア国防省は8月16日、前夜から同日朝にかけて、ロシア国内の各地に飛来したウクライナ軍の無人機(ドローン)計822機を撃墜したと発表しました。この一連の攻撃は、侵攻開始以降で最大規模とみられています。特に首都モスクワの周辺には約600機が集中して飛来しており、ロシア通信などは過去2年間で最大規模の攻撃であると報じました。
各州の被害状況として、モスクワ州では無人機の破片が住宅地に落下するなどして1人が死亡、3人が負傷しました。また、南部のロストフ州では5人が死亡し、西部のベルゴロド州やクルスク州でもバスが攻撃を受けるなどして計3人が死亡しており、全土で少なくとも9人の民間人らが犠牲となっています。
今回の攻撃で特に甚大な被害を受けたのが、ロシア版アマゾンとも呼ばれるインターネット通販大手「ワイルドベリーズ」の物流拠点です。モスクワ州にある同社の主要な倉庫が無人機の直撃を受けて大規模な火災を発生させたほか、医薬品を保管する別の倉庫も損傷しました。
上述した各地域の被害内訳を総括すると、全土で計822機の無人機が撃墜されたうち、大半の約600機が集中したモスクワ周辺では、「ワイルドベリーズ」の倉庫炎上や医薬品倉庫の損傷といった際立った物的被害とあわせて、死者1人、負傷者3人を出しました。一方でその他の飛来地域をみると、ロストフ州での死者5人や、ベルゴロド州などにおける路線バス直撃による死者計3人など、特に致命的な人的被害が報告されています。
ウクライナの度重なる攻撃によって物流網は深刻な機能不全に陥りつつあり、政府や軍の防空体制の限界を露呈させる結果となっています。ロシア当局が「過去2年間で最大規模」とも評するほどの無人機群の集中投下は、防空網を意図的に飽和させる戦術と推測されます。首都の中枢からわずか数十キロ圏内にあるインフラが相次いで炎上する事態は、これまで戦火を遠くの出来事と捉えがちだったモスクワ市民に対しても、紛争の現実と燃料供給などへの不安を直接的に突きつける結果となりました。
戦時経済への打撃を狙う作戦と長距離攻撃の波紋
ウクライナが民間企業である「ワイルドベリーズ」の施設を執拗に標的とする理由は、同社の巨大な物流網が無人機製造に必要な部品など「軍民両用品」の供給ルートとして利用されていると判断しているためです。ウクライナ当局は、一連の攻撃により同社の主要物流拠点10か所のうち7か所を使用不能にしたと主張しています。米誌フォーブス(ロシア版)の推計によれば、出店者側の損害額は約2800億ルーブル(約5500億円)に上る可能性があり、ロシアの戦時経済を背後から混乱させるという戦略が一定の成果を上げていることがうかがえます。
また、海外メディアは、これら一連のロシア領内への長距離攻撃に、英国が供与した無人機が初めて使用された疑いがあると報じました。西側諸国から提供された兵器がロシア深部への攻撃に直接用いられたとすれば、ロシア側の猛反発は避けられません。欧州全体を巻き込む形で、軍事的な緊張が新たな段階へと引き上げられる懸念が一段と強まっています。










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