
全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)は2026年8月18日、同年10月25日から始まる冬ダイヤにおいて、羽田空港と岡山空港を結ぶ路線の運航ダイヤを共同で調整すると正式に発表しました。両社が国内線において互いの発着時間をずらすダイヤ調整を実施するのは、これが全国で初の事例となります。
現状、羽田―岡山線では両社がそれぞれ毎日5往復、合計10往復を運航しています。しかし、従来はビジネス客を中心とした顧客の獲得競争を背景に、両社の便がほぼ同じ時間帯に集中して発着する傾向がありました。例えば羽田発の午前便では、全日本空輸が午前7時50分発、日本航空が午前8時5分発と、出発時刻がわずか15分しか離れていない便が存在し、乗客を取り合う非効率な状況が生じていました。
今回の冬ダイヤ調整では、こうした近接する時間帯の便について、出発時刻を意図的にずらして運航間隔を広げます。これにより、利用者が1日のなかで幅広い時間帯から便を選びやすくなり、利便性の向上と新たな旅客需要の掘り起こしが期待されています。具体的には、10月25日以降の調整後のダイヤにおいて、羽田発岡山行きの全日本空輸の便が現行の午前7時50分発から午前7時25分発へ前倒しされます。また、日本航空の同路線の便も現行の午前8時5分発から午前8時20分発に変更され、出発時刻の間隔が広がります。
この異例とも言える協調路線の背景には、国内航空事業における深刻な収益悪化があります。コロナ禍を経てリモートワークやウェブ会議が定着した結果、航空会社の主な収益源であったビジネス目的の利用客が構造的に落ち込んでいます。さらに、世界的な物価高を受けた航空燃料費の高騰や、人件費など運航コストの急激な上昇が経営を圧迫しています。国土交通省の試算によると、航空機燃料税の軽減措置といった公的支援を除外した場合、2025年3月期における国内主要6社の営業利益は赤字に転落する見通しです。2026年6月の実績において両社ともに平均搭乗率は7割程度にとどまるなど、厳しい事業環境が続く状況下で、過度な競合による共倒れを防ぎ、地域住民の生活基盤である地方路線網を確実に維持するための現実的な手法として、従来の「自由競争」から「協調」へと明確な戦略転換が図られました。
国土交通省の新指針が後押し、地方路線全体の持続可能性に向けた歴史的転換
これまで、同一路線で競合する航空会社同士が運航ダイヤや便数を調整する行為は「カルテル」と見なされ、独占禁止法に抵触する恐れがありました。そのため各社は独自の判断で運航時間を決めざるを得ませんでしたが、国土交通省の有識者会議は2026年5月、方針を大きく転換する報告書を公表しました。この報告書では、収益が悪化する国内線の維持を目的とし、一定の要件を満たす場合には事業者間のダイヤ調整を容認する(独占禁止法上問題ないとする)見解が明確に示されています。
今回の羽田―岡山線の取り組みは、この国の方針明確化を受けて適用される全国初のケースとなります。国が「競争」から「協調」を容認する姿勢を打ち出したことで、今後は同様の動きが他の赤字路線や、共同運航(コードシェア)を活用した便数の集約へと波及していく見通しです。一方で、競争の低下が運賃の不当な引き上げやサービス水準の低下を招かないよう、利用者保護との適切なバランスを取ることが今後の航空業界における重要な課題となります。












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