TikTokが4年連続で開催する「不登校生」の晴れ舞台。2026年のテーマは「わたしが見つけた居場所」

不登校を経験した10代が自らの思いや経験を動画で発信する「不登校生動画甲子園」。TikTok Japanと認定NPO法人カタリバが主催するコンテストは、2026年で4回目を迎えます。今年のテーマは「わたしが見つけた居場所」です。
今年から企画に賛同するTikTokクリエイターが「応援クリエイター」として参加するようになりました。プラットフォームやSNS などを通じた応援メッセージの発信や、授賞式でのコメント、応援クリエイター賞の選定などを行います。
8月には、不登校を経験した当事者やその家族が応募作品について語り合う「特別審査委員 作品検討会議 2026」も実施されます。この大会を立ち上げた背景について、大会の事務局代表と審査委員を務める石井しこう氏に話を聞きました。
<目次>
自身の不登校経験を元に考えた晴れ舞台

不登校ジャーナリストとして活動している石井氏は中学2年生の時に不登校になった経験があります。
「私自身も不登校だったんです。当時、不登校になったことを『ドロップアウト』や『つまずき』と捉えていました。現代の子どもたちも同じように考える人が一定数いるかと思います。このつまずきはとても大きく、絶望的に感じるんですよね」
そこで石井氏は「不登校の子どもたちに、晴れ舞台があってもいいのではないか」と考えました。
「もし、つまずきを表現に昇華するきっかけがあれば、不登校の経験を肯定的に受け止めたり、整理したりすることができるのではないかと思いました。大人が思っている以上に、子どもたちにとって動画は身近です。スマートフォンをタップできれば、誰とも会わなくても動画を作ることができます」
また、動画ではさまざまな表現方法を取り入れることができます。
「カメラの前で話すこともできますし、自分の描いた絵を投稿することもできます。また、3DCGやエフェクト、音楽などを活用して複合的な表現も可能です。この幅の広さと手軽さが動画の良さだと思っています」
大会がスタートした当初は「1回だけでも開催したい」と石井氏。実際の反響は予想していたよりも大きいものでした。
「大会に応募した人たちから『自分の不登校経験を生かせる場があるなんて信じられなかった』という声をもらいました。また、当事者の声を聞いた人たちには『こんなふうに考えているんだ』と感じてもらえました」
大会は3年連続で開催されました。そのなかで石井氏は特に印象に残っていることがあります。それは、「自分を救ってくれたもの」として、夕日や花火、桜並木、竹やぶ、滝などの景色を挙げるケースが予想よりも多かったことです。
「美しい景色を見て救われたと話す人が一定数いました。このことに私自身も衝撃を受けました。彼らは日々、何かに感動して、それを生きるエネルギーにして頑張っているんだと思います。私たち大人も、そういうことをもっと考えるべきだったのではないかと思いました」
逃げる先の居場所を見つけるきっかけに

4回目を迎える2026年のテーマは「わたしが見つけた居場所」です。石井氏は、不登校の子どもたちにとって「居場所」という言葉は特別な意味を持つと考えています。
「不登校とは『居場所が見つからなくなった状態』だと思います。学校や家庭が安心できる場所ではなくなり、どこにも行く場所がない。そこに苦しさの根源があるのではないでしょうか」
毎年8月末になると、「学校に行かなくても大丈夫」「逃げてもいい」というメッセージが発信されます。その一方で、代わりの居場所を見つけることは困難です。
「だからこそ、子どもたちが見つけた居場所を語ってもらいたいと思いました。居場所はオンラインのコミュニティかもしれませんし、フリースクールかもしれない。学校以外の人間関係かもしれません。自分を肯定できる場所を見つけることが、生きるエネルギーになることがあります」
現在、国や文部科学省でも、校内フリースクール、学びの多様化学校などの施策が検討されています。しかし、石井氏は、当事者の声が十分には反映されていないと考えています。
「不登校の子どもたちがどうやって学習評価を受けるべきか、どうすれば学びを続けられるのか、さまざまなことが議論されています。ただ、当事者の子どもたちが参加して話をしたり、議論したりする機会はまだ十分ではないと思います」
だからこそ「動画を通じて当事者自身の声を届けたい」といいます。
「どこかで決められたものに、子どもたちの声が入っていない。子どもたちのニーズがきちんと反映されていないということもあります。だからこそ、当事者の発信や声をしっかり聞いて、そこから何が社会に必要なのか、第三の居場所に何が必要なのかを考えてほしいと思っています」
「不登校」をイメージではなく、生の実態として伝えたい

大会には、不登校経験のある中川翔子氏をはじめ、さまざまな分野の専門家が審査員として参加します。石井氏は「取り組みに賛同してくださる方にお願いしました」と話します。
その背景には、「こんな人に自分の作品を見てもらいたい」と子どもたち自身が思える大会にしたいという考えがあります。そして、石井氏が大会の先に見据えているのは、不登校という社会課題そのものの見え方を変えることです。
「最終的には、この大会が不登校の人たちのなかに浸透していって、毎年毎年いろいろなドラマが生まれてほしいと思っています」
目指すのは、野球の甲子園や駅伝のように、毎年多くの人が注目する大会です。
「テレビの向こうやプラットフォームやSNS の向こうにいる『イメージとしての不登校』ではなく、生の実態として不登校が伝わる。そんな大会になっていけばと思っています」
不登校を経験した10代の子どもたちが、自らの言葉と映像で語る「わたしが見つけた居場所」。その一つひとつの作品が、今まさに居場所を探している誰かに届くことで、「ここにいてもいい」と思えるきっかけになるのかもしれません。

石井しこう
1982年生まれ。日本初の不登校ジャーナリスト。中学2年で不登校になり、フリースクールへ。19歳からNPOが発行する不登校の専門紙に関わり、編集長や代表を歴任。現在は独立し、400人以上の取材経験をもとに全国で講演やメディア発信、執筆を行う。著書に「学校に行きたくない君へ」など。


















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