
ここ10年ほどで、使っていない人はほとんど居なくなったのではないか?と思うほど普及しているスマートフォンやパソコンなどのデジタル機器ですが、便利である一方で「脳に悪影響を与えるのではないか?」と心配する人も多くなっています。
しかし、インターネットを使った調べ物をすることで知識を得たり、デジタル機器を通じた交流をすることで年をとっても脳を健康に保つことができるのではないか、という前向きな意見もあります。
デジタル機器の使用が私たちの脳に与える影響については、まだまだ議論が活発に交わされている状況です。今回はそんなデジタル機器の使用と脳の健康の関係についての研究をまとめた論文を紹介します。
デジタル機器の利用は高齢者の認知機能にどの様な影響を与えるのか
「デジタル機器を使いすぎると認知症になる」「デジタル機器の使用により脳が活性化されて認知症が予防される」という二つの真逆の考え方があり、これまで活発に議論がされており、様々な研究が行われてきました。
しかし、研究ごとに条件が異なりそれにより結果も様々になっており、この論争にはっきりとした結論を出すには至っていない状態でした。そこで研究チームが過去に行われた136件の研究を集め、それぞれの研究の条件を確認して、データを比較することが可能な57件の研究を統合することでテクノロジーの利用が高齢者の認知機能にどの様な影響を与えるのかについて明らかにしようとしました。
50歳以上の中高年〜高齢者を対象に記憶力や思考力のテスト
この研究は世界中の先行研究を集めて結果を統合して分析するメタアナリシスという手法で行われました。はじめに複数の学術データベースを検索して、今回の目的に合った論文を収集しました。
検索の結果136件の研究が見つかり、そのうち57件の研究が今回の論文の解析に組み込まれました。この57件の研究では50歳以上の中高年〜高齢者が研究対象になっており、平均年齢はおよそ68歳で男女比はほぼ半々でした。それぞれの研究ではパソコンやスマートフォン、インターネットの利用状況を調査した上で、記憶力や思考力のテストを行い、認知症の有無を調べました。また年齢や教育歴、健康状態、経済状況など結果に影響を与えるような要因は統計的に調整をして、それぞれの研究の質を評価して解析を行いました。
デジタル機器の利用は認知症等のリスクが約6割減少する可能性
収集した研究を解析した結果、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器を利用している高齢者はそうでない人と比較して認知機能が低下しにくいことが明らかになりました。経時的な認知機能低下はハザード比 HR =0.74(95%CI 0.66–0.84)と算出されました。これは、「テクノロジーを使う人は、使わない人よりも認知機能が低下するスピードが約26%遅い」ということを意味します。また、認知症や認知症レベルの障害リスクは、テクノロジー利用者は非利用者に比べて約6割減少「オッズ比 OR=0.42(95%CI 0.35–0.52)」することがわかりました。
これらの結果は、年齢や性別、教育歴や健康状態などを考慮しても変わりませんでした。
デジタル機器の利用は新しい知識の習得や人とのつながりを増やす
今回の研究により、「テクノロジーを使うことは脳に悪い」というよりも、「脳の健康を保つ手助けになる」可能性が高いことが明らかになりました。確かにあまりに長い時間ずっと使っていると脳に悪い影響があることは否定できませんが、デジタル機器を使うことで様々な知識を得るのに役立ったり、予定管理をうまく行ったり、人とのつながりを増やして脳を活性化したりと様々な恩恵を得ることができます。
今回の研究では、テクノロジーは認知症のリスクを高めるのではなく、むしろ脳の働きを保つ助けになる可能性があることを示しました。今後の展望としては、さらにどの様な使い方をすればより脳の健康を守るのに有用か、についての研究が行われることが期待されます。身近なスマートフォンやパソコンは、単なる便利な道具ではなく、上手に使えば「脳の健康を守る味方」になり得るのです。






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とは?あえて「集中しない」という選択肢」ライター:秋谷進(東京西徳洲会病院小児医療センター)-150x112.png)




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