
お酒を飲む合間に水などを飲む「チェイサー」には、翌朝の二日酔いを和らげる効果があるという通説が広く信じられてきました。しかし、大分大学医学部や三和酒類株式会社などの研究チームは、この通説における二日酔い予防効果を否定する科学的な検証結果を、国際学術誌「Frontiers in Pharmacology」に発表しました。
実験は、アルコール代謝に関わる酵素が正常に働く健康な日本人成人男性13名を対象とし、大分大学医学部附属病院のクリニカル・トライアル・ユニットにて厳密な条件統制のもと実施されました。参加者は事前の食事などを完全に統一した上で、体重1キログラムあたり純アルコール1.3グラム(体重70キログラムの人の場合、日本酒で約4合相当)を1時間かけて一定のペースで摂取しました。
この同一のアルコール摂取量という前提のもと、水を全く飲まない条件と、体重1キログラムあたり水15ミリリットル(体重70キログラムの男性で1リットル強)を同時に摂取する条件とで比較し、呼気アルコール濃度や翌朝の二日酔いの自覚症状などを主な指標として評価が行われました。その結果、大量の水を飲んだ場合であっても、飲酒後の呼気に含まれるアルコール濃度やアセトアルデヒド濃度の推移に有意な変化はありませんでした。さらに、翌朝の頭痛や吐き気といった二日酔いの自覚症状の強さにも差は見られなかったということです。
これまで、アルコールの利尿作用によって引き起こされる「脱水」が二日酔いの原因とされ、水分の補給が有効と考えられてきました。しかし、今回の検証により、水分摂取そのものがアルコールの代謝を早めたり、二日酔いを直接的に防いだりするわけではないことが示されました。研究チームは、チェイサーの真の効果は、水を飲むことで得られる満腹感により、結果として「飲酒量が低減する」ことや「飲酒ペースが緩和される」という間接的な酒量の調整作用にこそあると考察しています。
国も警鐘を鳴らす「純アルコール量」の把握とこれからの適正飲酒
今回の研究結果は、「水さえ飲めば悪酔いしない」という誤った認識に基づく過度な飲酒に警鐘を鳴らすものです。厚生労働省が2024年2月に公表した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」においても、飲酒による健康被害や生活習慣病のリスクは、摂取した「純アルコール量」に大きく依存することが強く示されています。
同ガイドラインでは、生活習慣病の発症リスクを高める1日当たりの純アルコール摂取量の目安を、男性で40グラム以上、女性で20グラム以上と定めています。この20グラムという数値は、アルコール度数5パーセントのビール500ミリリットル缶1本分に相当する量です。
国が推奨する健康的な飲酒行動のポイントとして「飲酒の合間に水を飲む」ことが挙げられていますが、これも体内のアルコールを直接分解するためではなく、アルコールをゆっくり吸収させ、結果的に全体の飲酒量を適切に抑えるための手段にすぎません。二日酔いや将来の健康リスクを確実に防ぐ方法は、チェイサーの効能を過信せず、自らの適正な酒量を正しく把握して無茶な飲み方を控えることに尽きると言えるでしょう。






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