
客室乗務員およびパイロットは、放射線被ばくに関連するがんによる死亡率が、日常的に放射線を扱う原子力技術者などを上回り、全職業の中で最も高い水準にあることが最新の研究で明らかになりました。
この研究は、米国の医学誌『JAMA Internal Medicine』において2026年8月に発表されたものです。研究チームは、2020~2024年の米国国民生命統計システムに登録された約1300万人分の死亡記録を分析しました。調査対象となった全米503の職業には、パイロット約1万4000人、客室乗務員約7000人が含まれています。
分析においては、喫煙の影響を排除する目的で肺がんを対象から除外し、放射線との関連が指摘されている複数のがんによる死亡率を精査しています。その結果、客室乗務員とパイロットの両職種において、乳がん、中枢神経系のがん、前立腺がん、メラノーマ(悪性黒色腫)による死亡率が有意に高いことが判明しました。さらにパイロットの場合は、これらに加えて白血病による死亡率の高さも確認されています。
調査対象となった全職種のなかで、放射線関連がんに起因する死亡の割合は客室乗務員が1位、パイロットが2位を記録しました。両職種の全死亡原因のうち、これら放射線関連がんが占める割合は約7%に達しており、他のいかなる職業よりも高い割合を示しています。航空機乗務員は高高度を飛行する際、大気による遮蔽が薄い環境で継続的に宇宙線を浴びるため、地上勤務者には見られない特有の発がんリスクを抱えていると結論づけられました。
これらの結果を整理すると、対象となった約7000人の客室乗務員が全米503職種中で放射線関連がん死亡割合の1位を占め、約1万4000人のパイロットが同死亡割合で2位(白血病リスクも上昇)となっています。一方で、一般乗客については年間の宇宙線被ばく量が少なく、特段のリスク上昇はみられないという対照的な傾向が示されています。
一般乗客への影響は限定的、航空業界への安全基準見直しを求める声も
一方で、出張や旅行などで飛行機を頻繁に利用する一般乗客については、がんリスクが高まるという直接的な結果は得られていません。米国の航空乗務員が業務において浴びる宇宙放射線は年間3〜6ミリシーベルトと推定されています。これに対し、長距離往復便を年に10回利用する一般乗客の年間被ばく量は約0.4ミリシーベルトにとどまり、乗務員の約7分の1以下と極めて少ない水準に収まるためです。
これまでも航空業界で働く人々の特定がん発生率の高さは指摘されてきましたが、今回の研究はそれが実際の死亡率増加に結びついていることを示す決定的なデータとなります。
また、航空機乗務員のがんリスク上昇の要因としては、高高度での宇宙線被ばくに加え、時差ボケや不規則なシフト勤務に伴う「体内時計の乱れ」も影響していると考えられています。一般乗客への影響は極めて限定的であることが確認された一方で、今後は日常的に空で働く乗務員の健康を守るため、被ばく量や労働環境の安全管理に関する議論がさらに深まることが予想されます。
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