
9月19日に開幕する愛知・名古屋アジア大会で、選手団の宿泊拠点として大型クルーズ船が活用されます。大会組織委員会は、従来のような選手村を新設せず、既存ホテルや移動式宿泊施設と組み合わせる方式を採用しており、船を「ホテルシップ」として使用する取り組みが大会運営の大きな特徴になります。
使用するのは、イタリア船籍の大型クルーズ船「コスタ・セレーナ」です。全長は290.2メートル、約1500室の客室を備え、大会期間には名古屋港金城ふ頭に停泊します。組織委の資料によると、停泊期間は9月15日から10月6日までの22日間です。選手や大会関係者ら延べ約4000人が利用する見通しとされています。
船内には客室のほか、レストラン、フィットネスジム、デッキなどを備えています。大会では競技会場への移動や食事、休養の場としての機能に加え、異なる国・地域から訪れる選手らの交流空間としても役割を担うことが期待されます。選手村を設けない場合でも、一定規模の選手団が集まる拠点を確保する必要があり、クルーズ船はその代替策の一つに位置付けられます。
当初、組織委は選手村の整備を計画していましたが、建設費などの上昇を背景に方針を変更しました。2024年には、経費削減のため選手村整備を取りやめ、ホテル利用を軸とする宿泊計画へ転換した経緯があります。一方、アジア・オリンピック評議会(OCA)からは、宿泊だけでなく選手交流の場を確保するよう求められており、船舶やコンテナ型施設を含む複数の宿泊・交流拠点を整える方向で調整が進められてきました。
ホテルシップの運用では、外航船であることに伴う入国管理、税関、検疫などの対応が課題になります。港湾の保安管理に加え、台風など荒天時の安全確保も重要です。競技そのものだけでなく、宿泊、輸送、安全対策を一体で機能させられるかが、開幕直前の運営準備で問われます。
宿泊改革は大会運営のモデルとなるか
愛知・名古屋大会は、9月19日から10月4日まで16日間にわたり開催され、45の国・地域から最大約1万5000人の選手らが参加する見込みです。大人数を受け入れる国際大会では選手村の建設が一般的ですが、今回は既存施設と仮設・移動型の施設を組み合わせ、建設負担を抑える方式を選びました。
クルーズ船の活用には、宿泊容量を短期間で確保できる利点がある一方、港から各会場への輸送、船内の生活環境、非常時の避難体制など、陸上の宿泊施設とは異なる管理が求められます。大会終了後に新たな選手村施設の活用方法を検討する必要がない点も、今後の大規模大会にとって参考となる可能性があります。
選手村を造らない決断が、経費抑制と選手の利便性を両立させる運営モデルとなるのか。名古屋港に浮かぶホテルシップは、大会の成否を映す象徴的な存在になりそうです。








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