
半導体メモリー大手のキオクシアは8月27日、岩手県北上市にある北上工場の敷地内に、メモリーを製造する新たな建屋となる「K3棟」を建設すると正式に発表しました。2029年度中の稼働開始を目指しており、協業パートナーである米国のサンディスクと共同で最大約1兆8000億円を投じる計画です。
今回の巨額投資の背景には、急速に社会浸透が進むAI(人工知能)向けデータセンターの旺盛な需要があります。AIの活用が「学習」から「推論」へと拡大する中、膨大なデータを高速で処理し、かつ長期的に保存できる大容量ストレージの必要性がかつてないほど高まっています。キオクシアは、電源を切ってもデータが消えない「NAND型フラッシュメモリー」の市場で世界トップクラスのシェアを誇り、新棟ではこの最先端品を量産して世界的な需要増に迅速に応える構えです。新棟となるK3棟の建設予定地は岩手県北上市の北上工場内であり、サンディスクとの共同による約1兆8000億円の投資を通じて、2029年度中に最先端のNAND型フラッシュメモリーの量産稼働を開始する目標です。
すでに同社の北上工場では、2025年9月に稼働した第2製造棟において、従来比でデータ処理速度が33%向上し、記憶容量も59%引き上げられた「第10世代」メモリーのサンプル出荷を始めています。K3棟の新設は、こうした次世代製品の生産ハブとしての役割をさらに強固にするものです。直近のキオクシアの業績は絶好調であり、2026年6月時点で時価総額が44兆円規模に達し、その後7月には45兆円を超えるなど、国内上場企業でトヨタ自動車を抜いてトップに立つ時期があるほど、市場からの期待も大きく膨らんでいます。経営陣は「投資を緩めるべきだというシグナルは見えてこない」と述べており、数年先の市場成長を見据え、先回りして生産拠点を拡充する強気の戦略が今回の大型投資に表れています。世界市場で激しく競り合う海外の競合メーカーに対抗するためにも、最先端技術への継続的な資本投下は欠かせない要素となっています。
官民一体で半導体網を強化、32年までに総額5兆円の投資計画も
新棟建設が発表された8月27日、キオクシアの太田裕雄社長は首相官邸を訪問し、高市早苗首相と面会しました。この場で太田社長は、今回の北上工場への投資を含め、日本政府の継続的な支援を前提として、サンディスクと共同で2032年までに日本国内へ総額約5兆円規模の大型投資を実施する中長期的な方針を伝達しました。この計画には、もう一つの主力拠点である三重県の四日市工場における設備拡充も含まれています。
太田社長が「強いAI(人工知能)需要にしっかり応えられるよう、政府からの支援をいただきながら日本で投資を進めていく」と説明したのに対し、高市首相は「日本国内で次世代メモリー半導体の開発、製造をさらに拡大することを大いに期待している」と応じ、国家の重要課題として歓迎する意向を示しました。
経済安全保障の観点から自国の半導体サプライチェーン強化が急務となる中、経済産業省の助成金制度などを活用した官民一体の取り組みが、日本の半導体産業の復権に向けた強力な推進力となることが見込まれます。












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