
京都大学や東京都立大学などの研究チームは、一般的な高分子材料の内部に微細な発泡構造をつくり、顔料を加えずに高い白色度を持つ材料を印刷する技術を開発しました。研究成果は英国の科学誌「Nature」に掲載されました。白色顔料として広く利用されてきた二酸化チタンなどに依存しない材料設計につながる可能性があります。
新技術は、透明なポリマーに紫外線を照射し、その後に溶媒で処理することで、材料の内部に極めて細かな空隙を生じさせる仕組みです。この空隙が、外から入る光のさまざまな波長を効率よく散乱させます。特定の波長だけを強く反射するのではなく、可視光を幅広く散乱させることで、人の目には明るい白色として認識されます。
研究チームはこの手法を「Deep Foam Photolithography(DFP)」と名付けました。光を当てる位置を制御すれば、白くする場所を選べるため、印刷工程への応用が可能です。研究グループは最大2万dpiの高解像度で白色を形成したとしており、精細な模様や文字の印刷にも活用できるとみています。
現在、塗料、インク、プラスチック、繊維、化粧品、食品などで使われる白色顔料の中心は二酸化チタンです。安定性や白色度、コスト面で優れる一方、健康・環境面をめぐる議論も続いています。欧州連合(EU)は、二酸化チタンを食品添加物として使用することを認めない判断を示しており、用途によっては代替技術の重要性が増しています。
今回の技術は、金属系の白色顔料を混ぜ込むのではなく、材料自体の微細構造によって白さを生み出す点に特徴があります。研究チームは、シロクマの体毛や昆虫の体表など、自然界に見られる構造色・構造白色の仕組みに着目したといいます。白色の形成と材料機能を同時に設計できれば、従来の顔料依存型とは異なる製品開発につながる可能性があります。
撥水性も付与、包装材や繊維への展開を視野
DFPで形成した表面には、微細な凹凸により水をはじきやすい性質も持たせられるといいます。研究チームは、白色化と撥水性を一つの製造プロセスで実現できる点を利点に挙げています。PFASと呼ばれる難分解性のフッ素化合物を使わない撥水材料の開発にもつながる可能性があります。
技術を実用化するには、量産時の製造コスト、耐候性、摩擦や洗浄への耐久性、既存のインク・塗料との比較などを検証する必要があります。それでも、白色顔料を使わず、必要な場所だけに微細構造を形成できる技術は、包装材、衣料、表示材、意匠性を求める工業製品など幅広い分野で注目を集めそうです。環境負荷と性能を両立する素材開発の一例として、今後の実用研究が課題となります。










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