重大なサイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」が本格稼働へ 警察と自衛隊による無害化措置が法制化

政府は10月1日、サイバー空間における脅威への対応を根本から転換させる「能動的サイバー防御」の運用を開始しました。同日付で「サイバー対処能力強化法」および関連する整備法が施行されたことに伴う歴史的な措置です。これまでは攻撃を受けてから事後的に対応する仕組みでしたが、今後は重大な被害が発生する前に先手を打つことが可能となります。
最大の焦点となるのは、警察や自衛隊が攻撃元のサーバーに遠隔で侵入し、不正プログラムの消去や機能停止を直接行う「無害化措置」です。ハッカー集団などへの対応は引き続き警察が主軸となりますが、今回の新制度における最大の変化は、国家の安全保障を脅かす重大な事態に自衛隊が介入し共同対処する権限が明確化された点にあります。必要に応じ、首相を議長とする国家安全保障会議で開催して方針を決定するなど、有事に備えた国家主導の危機管理体制が整備されています。
新たな防衛体制は「攻撃インフラに対する無害化措置」「官民連携の強化」「通信情報の利用」という3つの柱で構成されています。電力、通信、金融など15分野にわたる基幹インフラ事業者との情報共有を密にし、外国政府の動向も踏まえて平時から通信情報の収集・分析を進めます。なお、3本柱のうち「通信情報の利用」に関する規定はシステムの準備等を考慮し、2027年秋から施行される予定です。
一方、国が通信情報を広範に監視することで、憲法が保障する「通信の秘密」が不当に侵害されるのではないかという懸念への対応策も講じられました。運用の透明性を確保し国民の権利を守るため、近藤宏子・元札幌高裁長官が初代委員長に就任した独立機関「サイバー通信情報監理委員会」が新たに発足しています。同委員会が事前の承認や事後の厳格なチェックを行うことで、権限の濫用を防ぐ制度設計となっています。
世界最高水準の強靱化を目指す政府の姿勢と実効性への課題
運用開始の前日となる9月30日、政府は関係省庁会議を開き、最終的な体制確認を行いました。会議において古川俊治サイバー安全保障担当相は「世界最高水準の強靱さの確保に向けて全力で取り組む」と強い決意を述べました。また、高市早苗首相もX(旧ツイッター)を更新し、「サイバー空間の脅威は変化し続けている。対処能力の向上に不断に取り組む」と発信するとともに、同盟国などとの国際協調の重要性を強調しました。
新たな法律の施行により、日本のサイバー防衛力は諸外国に遜色ないレベルへと引き上げられることが期待されています。しかし、実際に制度を機能させるためには課題も残されています。政府機関における高度なサイバー人材の育成に加え、電力や通信など15分野に及ぶ基幹インフラ事業者との迅速かつ密接な情報共有体制の構築が求められます。国と民間が一体となり、継続的な体制強化を図ることが急務となっています。












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