我が子が「ドパガキ」に?1日5時間のスマホが10代のうつ病・肥満リスクを激増させるワケ

若年層のスマホ依存はかねてから問題視されているが、最近ではショート動画を見続ける若者を揶揄するインターネットスラングである「ドーパミン中毒のガキ」の略称、“ドパガキ”という新語が登場している。
思春期の脳は報酬に敏感でアルゴリズムの影響を受けやすい。研究によると12歳のスマホ所有はうつ病、肥満、睡眠不足と関連し、利用開始が13歳であっても1日5時間以上の使用で健康リスクが2倍以上になるという。
<目次>
思春期の脳はアルゴリズムの影響を受けやすい

喜びや楽しみに関係している脳内神経伝達物質であるドーパミンは活力のある前向きな生活を送るうえで欠かせないホルモンである。その一方でスマホ(スマートフォン)によるSNS、ゲーム、ギャンブルなどの強い刺激によって脳内でドーパミンが過剰に分泌され、「もっと欲しい」という欲求が止められなくなるドーパミン依存症もまた問題となっている。
ドパガキの特徴のひとつにスマホの「ながら見」があり、移動中でも食事中でも常にスマホをチェックし、挙句にはドライヤーで髪を乾かしている間や入浴中にもスマホを「ながら見」しているというケースもあるようだ。まるで呼吸しているかのごとくスマホを見続けていることから、生活の隙間時間の完全消滅を招いているとの指摘もある。
デジタルメディアは今や、若者の生活に欠かせないものとなっており、現在のデジタルプラットフォームは、「いいね!」機能、フォロワー数、美肌フィルター、アルゴリズムによるフィード、通知機能、そしてますます人間らしくなるAIチャットボットなど、エンゲージメントを高めるための機能を豊富に盛り込んで設計されている。
思春期までの子どもたちがこうしたデジタル環境に身を浸すことは特有の課題に直面する。思春期の若者の脳は報酬と社会的帰属意識を優先する傾向があり、これは大人たちの支援を受けた環境においては有効に機能するが、幸福よりもエンゲージメントを優先するプラットフォーム設計によって過大な影響を受け、搾取される可能性もある。
ノースカロライナ大学の研究チームが2026年7月に「Policy Insights from the Behavioral and Brain Sciences」で発表した研究によると、思春期の脳は生物学的な変化を遂げ、通知や「いいね!」といった社会的フィードバックや変動する報酬に対する感受性が高まることが示唆されている。そのため幼い子どもたちは現代のデジタルプラットフォーム設計上の“仕掛け”に特に影響を受けやすいということだ。
ソーシャルメディアへの接触が青少年の精神的健康、社会性、神経発達、行動発達に及ぼす影響に関する議論は世界中で続けられている。
オーストラリアでは2025年12月に16歳未満のSNS利用を禁止する法律が世界で初めて施行され、イギリスやスペイン、ギリシャなどでも16歳未満や15歳未満の利用を禁止する方向で検討されている。
12歳のスマホ所有にうつ病、肥満、睡眠不足のリスク

幼少期からのデジタル機器への接触が長期的にどのような影響を与えるのか、ドパガキの子どもを持つ親たちの懸念も深まっているようだが、今の子どもたちは何歳くらいからスマホを持つようになっているのか。
ドコモの「モバイル社会研究所」が2025年11月に実施した調査によれば、スマホ所有率は小学5年生で過半数を超え、中学1年生では8割を超えることが示されている。またスマホ所有の開始時期は平均で男子10.4歳、女子は9.9歳となっている。現在の多くの子どもたちが10歳前後でスマホを手にしている実態が浮き彫りになっているのだが、この年齢ははたして適切なのだろうか。
2025年11月に「Pediatrics」に掲載された研究では、思春期初期におけるスマホの所有は、うつ病、肥満、睡眠不足と関連していることが報告されている。
フィラデルフィア小児病院(CHOP)が主導し、カリフォルニア大学バークレー校およびペンシルベニア大学ペレルマン医学部と共同で行われた研究では、1万588人を対象にスマホの所有が健康状態の悪化と関連しているかどうかが調査されている。研究チームは保護者が報告したスマホの所有状況および初めてスマホを入手した年齢と、うつ病、肥満、睡眠不足との関連性を12歳時点で評価した。
研究者らは12歳時点でスマホを所有している者は、所有していない者と比べてうつ病、肥満、睡眠不足のリスク増加と関連していることを突き止めた。またスマホの入手年齢が低いほど、肥満と睡眠不足との関連が見られた。
12歳の時点でスマートフォンを所有していなかった3486人の若者のうち、13歳の時点でスマホを入手した者は、スマホを入手していない者と比較して、臨床レベルの精神病理と睡眠不足を報告する確率が高かった。
「私たちは、幼少期から青年期への移行期におけるスマホ所有の悪影響をより深く理解するためのさらなる研究の必要性を強調します。この年頃は精神疾患や睡眠障害のリスクがすでに高い発達段階にあります」と著者らは述べている。
スマホ開始が13歳でもそれなりの健康リスクがあることになるが、いずれにしてもスマホ開始が1年でも遅れたほうが心身の健康において好ましいことが示唆されることになった。
“ドパガキ”を放置しない

同研究チームにより新たな後続研究も届けられている。2026年8月に「JAMA Pediatrics」に発表された新たな研究で、研究チームはスマホを持たないグループを13歳から14歳まで追跡調査した。研究チームは13歳頃にスマホを入手することが、1年後のうつ病、肥満、睡眠に影響を与えるかどうかを調べた。
調査対象となった1959人のティーンエイジャーのうち、1230人が13歳から14歳の間にスマホを入手し、729人は入手しなかった。スマホを入手しなかった者と比較すると、13歳でスマホを入手した者は、14歳までに睡眠不足になるリスクが高かった。
研究チームは、13歳でスマホを初めて手にしたこと自体は、14歳でのうつ病とは関連がないことを発見した。一方、12歳で初めてスマホを手にした場合は、1年後の精神衛生上の問題との関連が見られた。
この研究は13歳という年齢はスマホを利用する準備がより整っていることを示唆しているが、それでも健康リスクがないわけではない。
スマホの使用頻度を調べたところ、スマホの使用時間と夜間の使用時間が、全体的な健康状態に影響を与える重要な要素であることが判明した。
14歳までにスマホを所有していた子どもの場合、1日に5時間以上使用する者は、1日に2時間以下しか使用しない者と比べて、うつ病や肥満になるリスクと睡眠不足になるリスクが2倍以上になることがわかった。ちなみにこの研究ではゲームやソーシャルメディアなど、具体的にどのようなスマホの利用が有害かは調査していない。
研究チームによればこれらの結果は、スマホの使用時間を制限したり、スマホを寝室から排除するなどの行動介入が、思春期の若者のスマホ使用のリスクを軽減できることを示唆している。
スマホの開始年齢は13歳以降のほうが望ましいが、重要なのは使用時間を短く保つことのほうにあるようだ。親たちには子どもの1日のスマホの使用時間を制限し、就寝前の使用を禁止することが推奨されている。少なくともこれら一連の研究結果からは、ドパガキを放置せずに適切な介入を行うことが求められているようだ。
※研究論文(2025年)
Smartphone Ownership, Age of Smartphone Acquisition, and Health Outcomes in Early Adolescence
※研究論文(2026年)
Smartphone Acquisition and Use at Age 13 Years and Health Outcomes at Age 14 Years


















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