
2025年の国勢調査において、富山市が人口を意図的に過大報告していた疑いが強まり、富山県警は10月3日、統計法違反の容疑で富山市役所の家宅捜索に踏み切りました。午前10時ごろ、スーツ姿の捜査員およそ10人が段ボールを手に庁舎へと入り、調査業務を担当していた企画調整課をはじめとする関係各所への捜索を進め、書類の押収を行いました。
この事態の発端は、同年9月29日に総務省が市の職員を氏名不詳のまま刑事告発したことにあります。ここで容疑となっている「統計法」とは、国や自治体が作成する公的統計が社会における重要な情報基盤であるという観点から、データの客観性や信頼性を確保するために定められた法律です。国勢調査のような国の根幹をなす基幹統計において、実態に反する虚偽のデータを作成する行為は極めて悪質とみなされ、違反者には懲役や罰金などの厳格な罰則が設けられています。
総務省が公表した確定値によれば、同市の実際の人口は39万9197人でした。しかし、5月時点での速報値は40万2133人と報告されており、両者の間にはおよそ3000人の乖離がありました。調査の過程で、国勢調査員が現地で「居住実態なし」として除外した世帯の記録を、市の職員が消しゴムで消すなどして不正に復活させ、架空の世帯を作り出していた手口が判明しています。水増しされた人数は少なくとも2000人以上に上るとみられ、県警は複数の職員が関与した組織的な不正の可能性も視野に入れ、押収した資料をもとに実態の解明を急いでいます。
総務省が同法違反容疑で刑事告発を行うのは今回が初めてという異例の事態です。過去の2010年の調査では、愛知県東浦町が市への昇格要件を満たすために人口を水増しし、当時の副町長が有罪判決を受けた事例がありますが、今回もそれに匹敵する重大な事件として捜査機関の厳しいメスが入ることになりました。県警は誰がどのような動機で不正を主導したのか、指揮命令系統も含めて全容解明を目指しています。
地方交付税6000万円の過大受給が発覚 市長は幹部の関与を否定
この問題に対し、藤井裕久市長は10月2日に記者会見を開き、市の人口を40万人台に維持することが目的だったのではないかという疑念について「全くないと断言できる」と強く否定しました。また、市幹部から現場への水増し指示の有無についても「幹部からの指示はなかった」と述べ、組織的な主導を現時点では否定しています。
しかし、この人口水増しは市の財政に直接的な影響を及ぼしています。2026年度の地方交付税の算定には、過大に報告された速報値の人口データが用いられていたためです。富山市の財務部による試算によれば、本来受け取るべき金額よりも約6000万円多く交付金を受領していた可能性が浮上しており、不当に得た財源の返還等、今後の対応が求められています。
藤井市長は「県警による捜索が行われたことを大変重く受け止めている。今後とも捜査に全面的に協力していく」と述べ、しかるべき時期に責任を明確にする考えを示しました。市は市民の信頼回復に向け、国勢調査の担当幹部を異動させるなど組織体制の立て直しを急いでいます。












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