
水を張らない田んぼに種をまき、ビール酵母の力で稲を育てる「節水型乾田直播栽培」が全国で注目を集めています。この新しい米作りは、田に水を張り続ける必要がなく、作業を大幅に省力化できることから、2024年には36道県の農業法人などが導入しました。農林水産省は労働不足などの課題解決につながるとして、栽培技術の確立に向けた研究開発に乗り出しています。
埼玉県杉戸町の農業生産法人「ヤマザキライス」の山崎能央社長(51)は、2024年から田んぼの1割で節水型乾田直播栽培を取り入れました。年間約600トンを生産する同法人では、「田植えから育てたコメと遜色なかった」と昨年産米の出来を振り返っています。
従来は田んぼを耕し、水を張り、別に育てた苗を田植えする必要があり、年間70日かかっていた水の管理も大きな負担でした。節水型乾田直播栽培では、必要な時だけ水を供給する方式に変わり、2024年の実績ではわずか5回の給水で済んだといいます。同法人では、この栽培法により機械設備コストを60%、労働時間を70%削減することに成功しました。
栽培を支えているのが、アサヒビールグループの「アサヒバイオサイクル」が開発したビール酵母を使った農業資材です。従来も田植え作業を省略する方法はありましたが、稲の生育が不安定という課題がありました。ビール酵母資材は、植物の免疫力を高めるとともに、土壌環境を改善する働きがあります。
収量確保と雑草対策が今後の課題
農林水産省は2024年に全国の8農業法人で栽培の実証事業を実施しましたが、収穫量が減った田んぼもありました。このため、収穫量を確保するために必要な水の量や雑草の繁殖を防ぐ方法などの研究に乗り出しました。
茨城大学の黒田久雄名誉教授(農業土木学)は「水資源の有効活用につながり、農作業を減らすことも可能だ。収量が減った例もあり、普及には国が栽培方法の目安を示すことが求められる」と指摘しています。
節水型乾田直播栽培は環境面でも恩恵があります。アサヒバイオサイクルの評価では、従来の水稲栽培と比べて温室効果ガス排出量を約65%削減できることが確認されました。水を張らないため、水田から発生するメタンガスを大幅に抑えることができます。
節水型乾田直播栽培は、労働力不足や高齢化が進む日本の稲作が抱える課題を解決する新しい栽培方法として、今後の普及が見込まれています。












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