プリズンツアーが大人気!来場者1.5万人の府中刑務所文化祭とは?
府中刑務所文化祭とは?
「府中刑務所文化祭」は年に一度、府中刑務所により開催されるイベントで、今回で48回目を迎えます。
”文化祭”という名称が付いていることもあってか、最近では関東地方の週末のイベント情報としても取り上げられ、遊びに行く先のひとつとして注目されています。地域の方々の理解と協力がなければ、刑務所の存在は成り立ちません。そのため、府中刑務所としてはどんなきっかけでもまずは触れてもらい知ってもらうことを大事にしています。
関東地方で最大規模の矯正展として知られる「府中刑務所文化祭」は、さまざまな催し物により、開催するたびに大盛況となっている一大イベントです。
府中刑務所文化祭の目的
府中刑務所文化祭は、法務省が主唱する「社会を明るくする運動」の一役を担っています。
収容されている受刑者や少年の改善更生・社会復帰のため、矯正行政が果たしている役割や日々の教育活動、改善指導などを紹介しています。出所者などを地域で受け入れていたただくため、矯正行政に理解を深めてもらったり、出所者等の再犯防止につなげることを目的としています。
府中刑務所文化祭はどんな内容?
第48回府中刑務所文化祭は、府中刑務所で開催されました。
<府中刑務所文化祭の内容>
- 刑務所作業製品の展示・即売
- 施設見学ツアー(プリズンツアー)
- 刑務所製パンの販売
- 自衛隊広報コーナー
- 消防広報コーナー
- 警察広報コーナー
- 地震体験コーナー
- ちびっこ刑務官写真撮影
- 性格診断テスト
- 東京矯正管区コーナー
- 府中市広報コーナー
- 広報パネル展示
- オリジナル作成コーナー(ミニ拍子木に名入れ、トートバッグへの絵付け)
- ステージイベント
多種多様なイベントや出展が揃い、府中刑務所の広大な敷地を生かしたプログラムが組まれており、一日を通じて楽しむことができます。
では、第48回「府中刑務所文化祭」の詳細について紹介します。
2023年(令和5年度)の府中刑務所文化祭の様子
新型コロナウイルスの影響により中断されていた後、4年ぶりに開催された府中刑務所文化祭。開場前から、府中刑務所の入口前には来場者の長い行列ができていました。この行列は刑務所沿いにぐるりと伸びて、最長で1kmを超えていたようです。行列の先頭にいた方は朝6時半頃から並んでいたそうで、後述しますが人数制限のあるプリズンツアーの人気を物語っています。
第48回府中刑務所文化祭の来場者数は、なんと約1万5千人でした。過去の平均来場者数9,000〜1万人を大幅に上回る数で、久しぶりの開催を心待ちにしていた多くの人々の期待を示しています。
刑務所内で出されるコッペパンに大行列
府中刑務所文化祭で人気のひとつが、実際に府中刑務所内の食事で出されるコッペパンの販売です。受刑者がどんなパンを食べているのか気になる来場者が、開場と共にずらりと行列をつくりました。
府中刑務所には外国人受刑者も収容されており、彼らの主食としてパンが定期的に食事メニューに組み込まれています。保存料を使用していないため、美味しく食べられる期限は翌日までとのことです。手に取るとしっかりとした重みと質感を感じられます。コッペパンは約1,300本が準備されていましたが、開場して1時間半ほどで完売しました。
府中刑務所文化祭の名物メニュー、プリズンカレー
『プリズンカレー』という印象的な名称のカレーは、府中刑務所文化祭の名物メニューです。府中刑務所内で実際に提供されているカレーのレシピを元に、府中刑務所文化祭のために再現されたものです。
このカレーには、白米と麦飯を7:3の割合で混ぜたご飯と、一口大の牛肉、たまねぎ、にんじん、じゃがいもが入っています。中辛で、ご飯との相性が良い味わいです。提供される食事の量は十分で、刑務所内の食事は管理栄養士によって、1日に必要な栄養やカロリーが計算・管理されています。
1,570食ものプリズンカレーが販売されました。食堂付近は、プリズンカレーに並ぶ人やカレーを食べている人で溢れていました。
安くて品質の良い刑務所作業製品の展示・販売
安くて品質が良いと言われている刑務所作業製品が、府中刑務所文化祭でも展示・販売されています。刑務所作業製品は、受刑者が製作をしています。
府中の公式ラグビーチームである東芝ブレイブルーパス東京と、東京サントリーサンゴリアスとのコラボレーションで生まれたトートバッグも販売されていました。府中刑務所には印刷工場があるため、府中刑務所の印刷製品も人気で常に来場者で賑わっています。
大きな家具や一枚板のコーナーも製品が充実しており、一般市場で購入できる価格の半額程度で、たくさん並んだ一枚板が来場者の目を引いていました。
横須賀刑務支所で製造されているブルースティックは、刑務所作業製品の中で最も人気がある製品のひとつです。ブルースティックは、服のシミや黄ばみ、汚れなど綺麗に落とせる驚異的な洗浄力と、除菌効果を持つ洗濯用固形石けんです。480セットが準備されていましたが、その人気は会場外まで行列ができるほどで、午後になる前に完売しました。
”獄”の文字を用いたインパクトのあるデザインのマル獄シリーズも人気で、常に行列が絶えませんでした。14時頃にはマル獄シリーズの製品もほとんど売り切れている状態でした。
刑務所作業製品を展示・販売しているエリアは、どこも人々で溢れていました。人気の製品はすぐ売り切れるので常連さんは目的の製品のところへ一直線に向かっていました。昼過ぎにはいくつかの製品が完売している光景も見受けられました。
刑務所の部活動や地域住民の方々による飲食ブース
府中刑務所文化祭の会場内には多くの飲食ブースが出店しており、あちらこちらから美味しい匂いが漂っていました。来場者はその良い香りに誘われ、足を止めて美味しい料理でお腹を満たしていました。
府中刑務所には部活動があり、文化祭では各部活動が飲食ブースを出店していました。綱引き部、サッカー部、柔剣道部、野球部など、さまざまな部活動が参加していたようです。
各ブースでは焼き鳥やフランクフルト、手作りのスイーツ、野菜などさまざまな商品が販売されており、飲食ブースがまさに文化祭の雰囲気を醸し出していました。
府中刑務所文化祭は、地域の方々や以前から出店している会社の協力により成り立っていて、盛り上がりを見せています。飲食ブース開場の中にある休憩スペースはお昼を迎える頃には常に人でいっぱいで、昼時以降はどの飲食ブースも行列でした。
来場者と一緒に盛り上がるステージイベント
府中刑務所文化祭のメインステージでは、地元の団体や刑務所職員による実演や演奏が行われていました。子供も混ざった実演は、親御さんが撮影をしていて思い出になるイベントになっていることを感じられました。
メインステージ前の座席に座っている人だけなく、飲食ブースに並んでいる人もメインステージを見て文化祭の雰囲気を味わっていました。
子供も大人も一緒に楽しめる体験コーナー
府中刑務所文化祭には、子供だけでなく大人も楽しめる体験コーナーがあらゆるところにありました。お子さん連れの家族は、子供の初体験や貴重な機会の記念撮影となるシーンが多く見られました。
AR体験コーナーは物珍しさから、次々とお子さんたちが体験に興じていました。
消化器に見立てた水を放出するもので炎の的を狙う体験や、消防車の形をしたミニカーのような乗り物は、子供たちにもわかりやすかったようで行列ができていました。楽しそうに体験するお子さんの笑顔が印象的でした。
地震を再現して体験できる「起震車」も、滅多にできない貴重な体験として、家族連れで賑わっていました。初めての大きな揺れを体験したお子さんたちは、驚きの表情を見せていました。また、自衛隊の車に乗ることができるコーナーもあり、こちらは大人たちが多く楽しんでいる姿が見られました。自衛隊の活動広報も兼ねており、なかなか知ることのできない情報も得られたようです。
性格検査コーナーは、設問60問に対してYES/NOで回答することで、自身の性格特徴を知ることができる診断テストです。この検査は、受刑者も実施している性格検査を簡易的にしたもので、体験しようという大人たちが多く、30〜40分待ちの人気あるコーナーとなりました。
ちびっこ刑務官の写真撮影コーナーや消防士の服を着たり消防車に乗れるコーナーもお子さん連れの家族にとても人気でした。子供たちがかっこいい制服に身を包み、笑顔で写真を撮る親御さんの姿は印象的で、家族での楽しい思い出づくりになったことでしょう。
トートバッグへのお絵描きを楽しめる体験コーナーや、ミニ拍子木に好きな文字を入れることのできるコーナーも人気でした。来場者はその場で自らオリジナルな作品を制作し、持ち帰ることができたため、楽しい思い出づくりに一役買ったことでしょう。
超人気!府中刑務所のプリズンツアー
府中刑務所文化祭と言えば、府中刑務所のプリズンツアー(所内見学)が大人気です。平成25年から実施されており、開始当初はバスでの見学でした。刑務所内に入れますがバスで通れる道から施設を見学する内容だったそうです。
府中刑務所文化祭が開場されると同時にほとんどの方が、会場奥にある施設見学ツアーの整理券をもらいに小走りで向かっていました。列に並んだ方から順に整理券が配布されました。午前、午後共に上限が1,000人ということで、プリズンツアーを目的に朝早くから開場待ちしていた方が多かったのかもしれません。
プリズンツアーで、刑務所内の順路に従って進む来場者。刑務所内の工場や体育館、浴場などの施設を順番に見学するのですが、20〜30分ほど歩きます。
刑務所の浴場には、下記のような細かなルールがあります。
- 掛け湯は桶2杯までで、刑務官の号令の後にのみ許される
- 体を洗うときに使うお湯は桶12杯まで
- 湯船に入るときに顔や身体をこするのは禁止
入浴は基本的に週3回、一度の入浴は15分以内という決まりごともあって、見学している来場者も驚いていました。
府中刑務所の矯正に関する取り組みについて
府中刑務所に展示された広報パネルを通じて、来場者は刑務所の取組についての理解を深めていました。また、どのように矯正に協力できるかについて、スタッフに質問する姿も見受けられました。このような交流は、地域社会と刑務所が協力し合い、再犯防止や受刑者の更生を支援するうえで重要な役割を果たしています。
府中刑務所をはじめとする矯正施設では、再犯防止を目指した推進計画が進められています。これは、出所者が再び刑務所に戻らないよう支援する取り組みです。再犯の主な原因は「住むところがない」ことと「就職先がない」ことの2つで、これらは一方だけでなく、両方が確保される必要があります。出所者を社会に受け入れるためには、地域住民の理解が不可欠です。
矯正展は、これらの矯正行政に関する理解を深める機会を提供するために開催されています。
刑務所内での医療福祉に関する動画や刑務所内誌の展示があり、来場者は刑務所内の実情や活動についてより身近に感じられるようになっています。また、受刑者向けの就労支援活動である「コレワーク」に関するブースでは、取り組みについて知る機会が提供されています。こうした情報発信や展示は、地域社会とのコミュニケーションを通じて理解を深め、受刑者の社会復帰に向けた支援を促進する役割を果たしています。
府中刑務所文化祭を通じて地域住民に伝えたいこと
府中刑務所の所長・白川さんに、今年の府中刑務所文化祭を通じてのメッセージをいただきました。
「新型コロナウイルスの影響で4年ぶりとなりましたが、天候にも恵まれてまずは開催できてよかったと感じています。正直、どのくらいの方に来場していただけるか不安でしたが、施設見学の並び方などを見て非常に関心を持っていただいていることを知ることができて嬉しく思います。
最近は、刑務所作業製品のクオリティが高いことをメディアを通じて発信いただいていることで、敷居が高いとか縁が遠いような刑務所などの矯正施設について知っていただけることもありがたく思います。
府中刑務所文化祭という機会を通じて、再犯防止への取り組みは地域や社会の方々のご理解、ご支援があってこそ進んでいくことを一番伝えたいと思います。久しぶりの開催でご不便をかけたこともありますが、来年は更に良い府中刑務所文化祭を開催したいと思います」
府中刑務所とは?
府中刑務所は、法務省矯正局の東京矯正管区に属する刑務所です。収容定員2,668名、敷地面積262,187平方メートル(東京ドーム約6個分)で、628人もの職員が勤務している東京矯正管区内および日本で最大の規模を持つ基幹施設。職員の中には、刑務官が8割ほどで、その他法務教官(少年院の先生などをしてきた人),心理技官(少年鑑別所で心理テストなどの鑑別を行ってきた人),医師等メディカルスタッフ,社会福祉士など多様な人が働いています。
刑期10年未満で犯罪傾向の進んだ日本人男子受刑者と,外国人男子受刑者が収容されている刑務所です。刑期は10年未満。外国人を多く収容するため、国際対策室という他の刑務所にはない部門が存在します。2023年11月3日時点で、外国人受刑者は350人前後が収容されており、約60カ国の出身者がおり、50言語以上の多国籍な状態で翻訳者も常駐しています。
府中刑務所の基本情報
”府中”という名称が付いていますが、最寄駅はJR武蔵野線の北府中駅です。京王線の府中駅からだと、バスで5分と徒歩10分弱といった距離です。
所在地
〒183-8523 東京都府中市晴見町4-10
交通手段
●JR武蔵野線「北府中駅」から徒歩10分
●JR中央線「国分寺駅」から府中駅行きバス「晴見町」下車徒歩5分
●京王線「京王府中駅」から国分寺駅行きバス「晴見町」下車徒歩5分
TEL 042(362)3101
FAX 042(362)2107
刑務所作業製品の展示場も併設されています。
〇営業時間
9時~12時30分、13時30分~16時(土日祝日を除く)
〇展示・販売製品
府中刑務所で製作された木工製品、洋裁製品、印刷製品、金属製品、革製品をはじめ、全国の刑務所から集められた様々な刑務所作業製品が展示されています。
府中刑務所
https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei05_00080.html
【告知】2023年度(令和5年度)第63回全国矯正展について
2023年(令和5年)の全国矯正展は大幅な見直しを行い、会場を昭和47年より使用している科学技術館から東京国際フォーラムに変更するとともに、開催時期を例年の6月頃から12月に移行したうえで実施予定です。
【開催日時】
2023年(令和5年)12月9日(土)10:00〜16:30
2023年(令和5年)12月10日(日)9:30〜15:00
【開催場所】
東京国際フォーラム(ホールE)
東京都千代田区丸の内三丁目5番1号
こちらも府中刑務所文化祭同様、矯正行政の取り組みを一般市民に伝える貴重なイベントです。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
第63回全国矯正展についての詳細はこちら↓
https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei05_00033.html