たばこで傷ついた肺を「再生」へ 東京慈恵会医大がCOPD向け新薬開発へ前進

たばこで傷ついた肺を「再生」へ 東京慈恵会医大がCOPD向け新薬開発へ前進

主に喫煙を原因とする慢性閉塞性肺疾患(COPD)の壊れた肺組織を修復し、再生させる可能性がある粒子「エクソソーム」を用いた新しい治療法を、東京慈恵会医科大学などの研究グループが発表しました。

従来のCOPD治療は、気管支拡張薬などで症状を和らげ進行を抑える対症療法が中心で、傷ついた肺そのものを元に戻す治療は存在しませんでした。

COPDは長期の喫煙歴と強く関係する「たばこ病」とも呼ばれ、日本では40歳以上の約530万人が患者と推定される一方、診断・治療を受けている人はごく一部にとどまるとされています。

研究チームは、肺の修復に関わる「リポFB」と呼ばれる線維芽細胞の一種に着目し、COPD患者の肺ではこの細胞の働きが低下していることを確認しました。

リポFBが分泌するエクソソームには、傷ついた肺の幹細胞やほかの細胞を活性化し、組織の再生を促す働きがあることが分かり、喫煙によって障害を受けた肺の修復機能を回復させる仕組みが示されたといいます。

マウスを用いたCOPDモデルにエクソソームを投与した実験では、肺機能の改善が確認され、さらにCOPD患者の肺から採取して培養した細胞組織でも、損傷部位を修復する効果が再現されました。

この成果は、呼吸器分野の国際的な専門誌「American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine」に掲載されており、国際的にも高い評価を受ける基礎データとなっています。

東京慈恵会医大の藤田雄准教授らは、エクソソームの作用を応用し、壊れた肺そのものを再生させる吸入型の治療薬の開発を進めており、2030年ごろをめどに人への投与を伴う臨床試験の開始を目指すとしています。

実用化すれば、COPDだけでなく、肺が硬くなる病気や肺がん手術で一部を切除した患者の肺機能回復など、さまざまな肺疾患への応用も期待されます。

COPD医療と禁煙対策に与える影響

今回の成果は、これまで「進行を遅らせるしかない」とされてきたCOPD治療において、初めて肺組織の再生を視野に入れた根本治療への道筋を示した点で大きな意義があると専門家はみています。

COPDは世界的にも主要な死亡原因の一つで、日本でも潜在的患者数が500万人以上に上ると推計されているにもかかわらず、多くが未診断で、息切れやせきといった症状を「年齢のせい」と受け止め受診が遅れるケースが少なくありません。

今後、エクソソームを用いた再生医療の実用化が進めば、早期からの介入により、進行した患者だけでなく、より軽症の段階から肺機能を保護・回復させる新たな治療戦略が構築される可能性があります。

一方で、喫煙がCOPD発症の最大の危険因子である事実は変わらず、治療法の進歩と並行して、禁煙支援や受動喫煙防止策など、予防に向けた公衆衛生対策を強化する重要性も改めて浮き彫りになっています。

研究チームは、今後も安全性や長期的な効果を慎重に検証しながら、COPDをはじめとする呼吸器疾患全体の治療成績向上につなげたい考えです。

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