
半導体受託製造で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は2月5日、熊本県菊陽町に建設中の第2工場で、回路線幅3ナノメートル(ナノは10億分の1)の最先端半導体を量産する計画を明らかにしました。TSMCの魏哲家(シーシー・ウェイ)董事長(会長)兼最高経営責任者(CEO)が同日午前に首相官邸を訪れ、高市早苗首相に直接計画変更を伝達しています。当初は通信機器向けの6ナノメートル品を生産する予定でしたが、世界的なAI(人工知能)半導体の需要拡大を背景に、より高性能な3ナノメートルへ製造技術を大幅にアップグレードする方針です。
3ナノメートル半導体は、TSMCが台湾で2025年に量産を開始した2ナノメートルに次ぐ先端技術で、米エヌビディアなどが手がける次世代AI半導体の中核部分や周辺回路に使われています。このほかAIデータセンターや自動運転、産業用ロボットなど高度な演算処理が必要な幅広い分野での活用が見込まれます。現在、3ナノメートル品はすべて台湾で生産されており、日本国内に同水準の製造拠点は存在しません。今回の計画が実現すれば国内初の3ナノ生産拠点となり、2028年の量産開始が目指されています。
計画変更に伴い、設備投資額は当初の約122億ドル(約1兆9000億円)から170億ドル(約2兆6000億円)規模へ大幅に拡大する見通しです。日本政府はすでに第2工場に対し最大7320億円の補助金支出を決めていましたが、製造品目の高度化を受けて補助金の増額を含む追加支援を検討しています。高市首相は「台湾に集中している3ナノ半導体の工場が日本にできることは、経済安全保障の観点から大きな意味がある」と述べ計画変更を歓迎しました。TSMCの日本法人JASMにはソニーグループやデンソー、トヨタ自動車も出資しており、国内半導体エコシステムの強化が期待されます。
国内ではAI半導体をめぐる大型投資が加速
TSMCの計画転換にとどまらず、日本国内ではAI半導体のサプライチェーン構築に向けた大型投資が相次いでいます。先端半導体の国産化を目指すラピダスは、北海道千歳市の工場で2027年度後半から回路線幅2ナノメートルの量産を計画しており、さらに2棟目の工場着工や1.4ナノメートル製造も視野に入れています。また、米半導体大手マイクロン・テクノロジーは広島県東広島市にAI向け次世代メモリー「HBM(広帯域メモリー)」の製造棟を新設し、2028年ごろの量産開始を目指しています。投資額は1兆5000億円に上り、経済産業省が最大5000億円を補助する見通しです。日本政府は2021年度以降、半導体分野に約5兆7000億円の予算を確保してきました。TSMC、ラピダス、マイクロンの3拠点がそろえば、ロジック半導体からメモリーまで国内のAI半導体供給体制が大きく前進することになります。












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