きつれがわ矯正展とは
「きつれがわ矯正展」は年に一度、喜連川社会復帰促進センター主催により開催されるイベントで、今回で12回目を迎えます。
このイベントは、地域住民に矯正行政の取り組みを紹介するとともに、刑務所での作業によって生産された品質の高い製品を手頃な価格で販売することで、矯正行政への理解を促進することを目的としています。
刑務所の中まで見ることができたり、手頃で品質の良い刑務所作業製品を購入できる「きつれがわ矯正展」は、さまざまな催し物もあって、地域の方々に注目されているイベントです。
きつれがわ矯正展の目的
「きつれがわ矯正展」は、法務省が主唱する「社会を明るくする運動」の一役を担っています。
収容されている受刑者や、少年の改善更生・社会復帰のため、矯正行政が果たしている役割や日々の改善指導、教育活動などを紹介しています。出所者などを地域で受け入れていただくため、矯正行政に理解を深めてもらったり、出所者等の再犯防止につなげることを目的としています。
きつれがわ矯正展はどんな内容?
令和5年度きつれがわ矯正展は、栃木県さくら市にある喜連川社会復帰促進センターで開催されました。
<令和5年度きつれがわ矯正展の内容>
- 施設見学
- 刑務所食事体験(受刑者の食事同様の定食やパン)
- 刑務所作業製品の展示・即売
- 各種体験コーナー
- 性格検査、脳トレーニング、ボッチャ(リハビリスポーツプログラム)、窯業体験
- わくわくハニーワールド(SDGsコーナー)
- 矯正広報コーナー
- ちびっこ刑務官写真撮影
- 飲食コーナー
- ステージイベント
喜連川公方太鼓、きつれがわ幼稚園鼓笛隊、ストラミュージック、セブンダンスカンパニー、ガールズキュービー、RAMU及び雷都少女(ライトガール)
多種多様なイベントや出展が揃い、地域住民や企業との交流の場でもあり、さまざまな楽しみ方ができます。
では、「令和5年度きつれがわ矯正展」の詳細について紹介します。
令和5年度きつれがわ矯正展の様子
新型コロナウイルスの影響を受けて、4年ぶりに開催されたきつれがわ矯正展。喜連川社会復帰促進センターの入り口にて、テープカットが行われて来場者の大きな拍手と共にきつれがわ矯正展がスタートしました。
令和5年度きつれがわ矯正展の来場者数は、なんと3,000人を超えました。久しぶりの開催を心待ちにしていた多くの人々が来場しました。
当日は天候にも恵まれて、来場者の足取りも軽く進んでいるように感じられました。
スタートしてすぐに会場内の各所で、喜連川公方太鼓やきつれがわ幼稚園鼓笛隊、ストラミュージック演奏会による演奏が行われ、とても賑やかな雰囲気に包まれました。
手頃な価格で品質が良い刑務所作業製品
販売価格以上に品質の良さを感じることができる刑務所作業製品は、矯正展の中でも注目を集めています。特に、“日光彫”と呼ばれる伝統工芸品は、喜連川社会復帰促進センターの中でも目玉製品のひとつです。この製品は非常に高度な技術を要します。
こちらでは黒羽刑務所時代から22年もの間、木工担当をされている作業専門官にお話を伺いました。
「プロとして妥協しないこと。人によって器用、不器用がありますが、技術力を上げていくことが大変でもあり、おもしろみでもあります。8ヶ月〜1年2ヶ月ほどあれば日光彫の技術を身につけることができます。自分のことを”先生”と呼んでくれるようになるまで信頼を持ってくれるのは嬉しいですね」
喜連川社会復帰促進センターの敷地内を広く使って、さまざまな刑務所作業製品が展示・販売されていました。当日は天候にも恵まれ、来場者は各ブースで展示・販売されている刑務所作業製品を見て回っていました。
”獄”という字が特徴的なデザインのマル獄シリーズも展示、販売されていました。
横須賀刑務支所で製造されているブルースティックは、96セットが準備されていましたが、午前中早い段階で完売になっていました。ブルースティックは、服のシミや黄ばみ、汚れなど綺麗に落とせる驚異的な洗浄力と、除菌効果を持つ洗濯用固形石けんで、刑務所作業製品の中でも最も人気がある製品のひとつです。
クレジットカードや電子マネー、コード決済などに対応しているレジもありました。時代の流れに合わせて決済方法も幅を広げることで、さまざまな年齢層に刑務所作業製品を手にとってもらえるような工夫をされていることが伺えます。
美味しそうな食べ物が並ぶ飲食ブース
喜連川社会復帰促進センターの敷地内に、さまざまな飲食ブースが出店していました。鮎の塩焼きやお団子を炉端焼きのように提供するブースは、栃木県ならではのように感じました。
焼き物や揚げ物などの美味しそうな香りが会場内を漂っていて、来場者の食欲をそそります。
「道の駅きつれがわ」の販売ブースには、大きな野菜がずらっと並んでいて圧巻でした。さくら市の更生保護女性会ブースではバザーをやっていたり、雑貨屋さんのブースの販売もあり、来場者とのコミュニケーションの場にもなっていました。
子供も大人も一緒に楽しめる体験コーナー
ちびっこ刑務官写真撮影コーナーでは、子供サイズの刑務官の服を着てパトカーや消防車、消防車の前で写真撮影をする家族の姿が目立ちました。刑務官の服に袖を通して照れながらも、笑顔でポーズをとるちびっこが可愛らしかったです。
消防車や救急車には実際に乗車することもでき、普段できない体験に子供だけでなく大人も気分が高揚していました。
旧喜連川(きつれがわ)町で生まれた「コンタ君」と「スポレク“エコとちぎ”2011」のマスコットキャラクターとしてデビューした「とちまるくん」も、きつれがわ矯正展へ登場して、子供に囲まれていました。
裁判員制度のマルバツクイズにチャレンジできるコーナーがありました。
裁判員制度とは、国民の中から選ばれる裁判員が刑事裁判に参加する制度で、平成21年5月21日に始まりました。裁判員は、法廷で行われる審理に立ち会い、裁判官とともに被告人が有罪か無罪か、有罪の場合にはどのような刑にするのかを判断します。
裁判員制度はまだ馴染みがない方が多いかもしれません。大人の方がマルバツクイズにチャレンジして裁判員制度について知る機会となり、子供は宇都宮地方検察庁のマスコットキャラクター「べりぃちゃん」の塗り絵で楽しんでいました。
刑務所内での機能向上トレーニングの体験として輪投げなどにチャレンジできるコーナーがあり、大人も子供もゲーム感覚で楽しんでいました。脳トレと称して頭を使う問題が書かれた問題用紙は知識や計算を問われるもので、年配の方々が体験している様子が伺えました。
地域の方々やゲストで盛り上がるステージイベント
喜連川社会復帰促進センター敷地内の中央に設けられたステージでは、出演する子供を観覧する親御さんや、アイドルのファンなどで賑わっていました。
ステージ上は、ダンスや演奏、アイドルなどの出演で盛り上がっていました。
きつれがわ矯正展のステージに出演した演者には、感謝状が贈呈されました。
また、職業訓練で使用した銅線を売却し、公益社団法人被害者支援センターとちぎへ寄付金の贈呈もありました。
株式会社小学館集英社プロダクションの方に、喜連川社会復帰促進センターでの活動について話を伺いました。
「センター内の職業訓練では、インターネット環境を整えてネットショップを制作するなど、民間のノウハウを活用した事業を実施できることが官民協働の良いところです。法務省より委託を受け、取り組み始めて17年間が経ち、職業訓練や教育など、民間のノウハウを活用したコンテンツ内容を提供しています。受刑者と接することは緊張感がありますが、刑務官の方に同席してもらって安全の確保もしていますし、こういった仕事ができることは貴重な機会だと感じます。受刑者には再犯して欲しくないが、そもそも刑務所に来ないように弊社としても教育分野で頑張りたいです」
刑務所で出されている食事やパンが食べられる?!
きつれがわ矯正展では、実際に喜連川社会復帰促進センターの施設内で出されている食事を再現した「喜連川定食」を提供していました。「喜連川定食」の内容は、畑のお肉の甘酢あん、キャベツの塩昆布和え、漬物、麦飯です。見た目からしても一般的な定食と遜色ない内容ではないでしょうか。
喜連川社会復帰促進センターは官民協働による運営を行っており、受刑者の食事に関して民間の業者が調理指導を担当しています。
けんちん汁やきしめんは矯正展用のメニューとなりますが、野菜がたっぷり入っていて栄養バランスもとても良さそうです。寒い時期には体もあったまる食事です。喜連川社会復帰促進センターで収穫した野菜が使われているそうです。
喜連川社会復帰促進センターで収穫したさつまいもを使用したスイーツで、こちらも矯正展用に提供されました。このメニューではありませんが、甘いものも施設内ではたまに提供されるようで、甘いものは受刑者にとって人気の献立です。
刑務所の中を見学できるツアー
喜連川社会復帰促進センターの施設内を見学できるツアーは、来場者にとって滅多に経験できないことから1,000人近い方が施設見学に参加しました。
施設内の写真は撮影NGなので写真はありませんが、喜連川社会復帰促進センターは平成19年4月に開庁した施設で、新しい雰囲気を感じる内装でした。さきほども出てきた野菜が、実際に施設内の畑で育てられている様子も見れました。受刑者は限られていますが、太陽の下で作業できることは珍しく、体を動かす作業は気分も良いのではないかと思います。
喜連川社会復帰促進センターと「うじいえ自然に親しむ会」が共に行っているSDGs達成に向けた取り組みのひとつ「ニホンミツバチの養蜂」に成功したということで、そのハチミツを試食という形で提供していました。
参照)喜連川社会復帰促進センターにおけるSDGs達成に向けた取組に関する法務大臣訪問について
https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei07_00027.html
喜連川社会復帰促進センターの矯正に関する取り組みについて
喜連川社会復帰促進センターでの取り組みに関する内容やデータが、広報パネルで展示されており、来場者が知る機会となっています。パネルの前に立ち止まってゆっくり眺める方の様子が目立ちました。
矯正行政には刑務所などで働く人たちだけでなく、保護司など更生保護を支える方々もいます。更生保護を支える方々に関する広報パネルもあり、初めて知ることもあったかもしれません。
栃木県さくら市も矯正行政に対する取り組みを行っていたり、歴代の刑務官募集ポスターの掲示もあったり、来場者に対して矯正に関する取り組みの紹介をしていました。
犯罪被害者等支援に関することや受刑者に対する関わり、受刑者の作品などさまざまな広報パネルがあり、これらの広報コーナーも足を止めてゆっくり眺める方々が多くいらっしゃいました。
きつれがわ矯正展を通じて地域住民へ伝えたいこと
冒頭でも記載した通り、きつれがわ矯正展は、法務省が主唱する「社会を明るくする運動」の一役を担っています。
きつれがわ矯正展を通じて地域の方々に伝えたいことは、出所者を地域社会で受け入れていただくために、出所者などを地域で受け入れていただけるよう、矯正行政に理解を深めてもらったり、出所者等の再犯防止につなげることです。収容されている受刑者や、少年の改善更生・社会復帰のため、矯正行政が果たしている役割や日々の改善指導、教育活動などにきつれがわ矯正展を通じて少しでも多くの皆さんに触れていただきたいということが、喜連川社会復帰促進センターが望むことです。
喜連川社会復帰促進センターとは?
平成19年4月に、東日本で唯一のPFI手法と構造改革特区制度を活用した新しいタイプの刑務所として開庁しました。令和4年度からは、公共サービス改革法を活用して、引き続き、「官民協働による運営」、「人材の再生」及び「地域との共生」の運営理念に基づいた取組を進めています。
引用元:法務省>喜連川社会復帰促進センター
PFIとはPrivate Finance Initiativeの略で、民間企業が運営に一部参加する刑務所です。日本で3番目、東日本で初のPFI手法を取り入れました。国が設計した刑務所で、運営のみPFI事業で行う「運営特化型PFI事業」を行っている施設です。
平成11年に廃止された黒羽刑務所喜連川刑務支所跡地に開庁しました。
喜連川社会復帰促進センターの基本情報
栃木県さくら市喜連川にある刑務所です。
収容対象は、犯罪傾向の進んでいない受刑者等。収容定員は、1,956名(うち女子50名)。
日光彫家具製作をはじめとした木工作業、金属の加工作業、文具組立、プラスチック製品組立、解体(リサイクル)などを刑務作業として行っています。
所在地
〒329-1493 栃木県さくら市喜連川5547
交通手段
●JR氏家駅から車で20分(約13km)
●矢板ICから車で25分(約15 km)
TEL 028(686)3111
FAX 028(686)5656
喜連川社会復帰促進センター
https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei05_00074.html
https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei07_00025.html