
総務省は9月26日、日本郵便に対して行政指導を実施し、郵便物の放棄・隠匿に関する公表体制の見直しを求めました。同社が郵便物の配達不能事案の一部を公表していなかったため、利用者保護の観点から透明性の向上が必要と判断されたのです。
日本郵便は2021年から2024年までの4年間において、配達員による郵便物の放棄や隠匿などの事案を一定数公表していました。しかし、総務省の調査により、同時期に公表されていない同様の事案が相当数存在し、その規模は数千通レベルに及んでいたと明らかになっています。
非公表事案には、職員のロッカーや休憩室、自宅の押し入れから発見されたケースや、シュレッダーで細断されて廃棄されていた郵便物も含まれていました。
総務省の行政指導は3つの要請事項で構成されています。第一に、郵便法に抵触する事実があった場合は原則として総務省への報告と併せて公表を行うこと。第二に、法令への抵触の有無にかかわらず、郵便物の紛失等で配達・返還等の対応が困難な事案については、利用者保護の観点から利用者が当該事案について認識できるよう原則として公表し、併せて総務省への報告を実施すること。第三に、公表の取扱いについては全国で統一的な判断基準による対応を行うことです。
これまで日本郵便は「犯罪と認定した事案のみ」を公表するという基準を採用していました。配達員が故意ではなかったり、誰が行ったか特定できなかったりした場合は、原則として公表を控えていたのです。
総務省は2024年6月に、同社の公表体制が「利用者目線に欠けている」として改善を促すよう通知していました。しかし、その後も適切な対応が取られていないと判断し、今回の行政指導に踏み切りました。
村上誠一郎総務大臣は26日の閣議後記者会見で、「郵便事業に対する国民への説明責任と信頼の確保、そして利用者保護の観点から改善を促すための行政指導を実施することになった」と説明しています。同大臣は「日本郵便には今回の指導を受け、適切な事業運営に努めてほしい」と述べました。
今後の監督体制強化と報告義務
総務省は日本郵便に対して、10月末までに、今回の行政指導に関する対応方針について報告することを要求しています。さらに、2026年1月末から2027年1月末までの1年間、具体的な進捗・履行状況を3か月ごとに報告するよう義務付けました。総務省は、報告内容によっては追加的に報告を求める可能性も示しており、継続的な監督強化の姿勢を明確にしています。
日本郵便は行政指導を受けて「今般、行政指導を受けたことを重く受け止め引き続き、総務省のご指導をいただきながら改善を図ってまいります」とのコメントを発表しました。同社は今後、全国統一の判断基準に基づく公表体制の構築を進めることになります。












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