
日本銀行は9月19日に開催した金融政策決定会合で、2010年から買い入れを続けてきた上場投資信託(ETF)の売却を開始することを決定し、市場に大きな波紋を広げました。植田和男総裁は会見で「保有ETFの売却完了には100年以上かかる」と述べ、段階的な処分を行う方針を明らかにしました。
この発表を受けて、日経平均株価は午後1時過ぎに一時800円を超える急落を見せました。朝方には取引時間中の史上最高値となる4万5852円まで上昇していましたが、ETF売却の発表直後には4万4400円台まで急落し、日中値幅は1357円に達しました。しかし引けにかけて下げ幅を縮小し、結局257円安の4万5045円で取引を終えました。
ETFの売却ペースは簿価ベースで年間3300億円程度、時価ベースでは約6200億円となる見込みです。市場全体の売買代金に占める売却割合は0.05%にとどまり、全てを売却するのに100年以上の時間がかかる計算となります。植田総裁は「市場への攪乱的な影響を極力回避する」との基本方針を強調し、市場の状況に応じて売却額の一時的な調整や停止を行うとしています。
金融機関から買い取った株式の売却が7月に完了したことで得られた知見を活かし、今回の決定に至ったと説明されています。日銀の保有するETFは現在、簿価で約37兆円、時価で約70兆円に達しており、東証プライム市場の時価総額の約8%を占める規模となっています。この異例の資産を中央銀行が保有し続けることは「禁じ手」とされており、金融政策の正常化に向けた重要な一歩と位置づけられています。
一方、同日の会合では政策金利を0.5%程度に据え置くことも決定されました。これで5会合連続の据え置きとなり、アメリカの関税政策が日本経済に与える影響を見極める必要があると判断されました。高田創審議委員と田村直樹審議委員はそれぞれ0.75%への利上げを提案しましたが、反対多数で否決されています。
市場の反応と専門家の分析
市場関係者からは、ETF売却の規模が予想されていた範囲内であり、長期的な影響は限定的との見方が示されています。三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩氏は「ETFの売却方針は金額的にみても市場へのインパクトは小さく、投資家が身構える局面は早々に終了するだろう」と分析しています。
野村證券の池田雄之輔氏も「年間3,000億円から2兆円程度の売却であれば、海外投資家の年初来約4.1兆円、事業法人の約8兆円の買い越しと比較して十分に吸収可能」と指摘しています。また、上場企業による自社株買いの設定枠が1〜5月の時点で約12兆1000億円の規模に膨らんでいることも、ETF売却の悪影響を軽減する要因として挙げられています。
しかし、今回の決定は事前に市場に伝えることが困難な「サプライズ」であったため、短期的な動揺を引き起こしました。植田総裁は記者会見で「市場が大きく反応してしまう可能性があるため、事前にガイダンスすることが難しかった」と説明しています。
専門家の間では、今回の売却開始は金融政策正常化の一環として評価される一方、100年以上かかるペースでは真の出口戦略とは言えないとの見方もあります。野村総合研究所の木内登英氏は「最終形としてのETF、J-REITの出口戦略は後に実施される可能性がある」と指摘し、将来的には政府保証付きの受け皿機関への移管などの枠組みが検討される可能性を示唆しています。
アメリカでは前日にFRBが0.25%の利下げを決定しており、世界的な金融緩和の流れの中で日銀の動向が注目されています。植田総裁は米国の関税政策の影響について「これから一段と出てくる」と述べ、引き続き慎重に見極めていく姿勢を示しました。
今回の決定により、日銀は金融政策の正常化に向けてさらなる歩みを進めることになりましたが、市場の安定を最優先に慎重なアプローチを取る方針が明確になりました。












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