
日本円の対外的な購買力低下が、一段と鮮明になっています。国際決済銀行(BIS)の統計によると、2026年1月時点の実質実効為替レート(2020年=100)は67.73と、変動相場制へ移行した1973年以降で最も低い水準を更新しました。1995年4月のピーク時は約193.95で、日本の対外購買力はおよそ3分の1に縮小した計算になります。
名目の為替レートでも円安傾向が続いています。東京外国為替市場では2026年1月、円相場が一時1ドル=159円台まで下落し、2024年7月以来約1年半ぶりの円安・ドル高水準となりました。
タイバーツやマレーシアリンギなどアジア通貨に対しても円の価値は下落しており、海外旅行や輸入品のコスト増に直結しています。日本人の海外旅行者数は円安が本格化した2022年以降、コロナ禍前の水準を下回って推移しており、その影響が消費行動にも及んでいることがうかがえます。
現在の政策金利は0.75%と約30年ぶりの高水準に達しているものの、2%台半ばが続くインフレ率を大きく下回っており、実質的な円の価値は目減りしやすい状況です。名目金利が上昇しても物価上昇率がそれを上回る限り、実質金利はマイナスのままとなり、円を保有する魅力は高まりません。円安圧力が続く背景の一つとして、こうした構造的な問題が指摘されています。
日本銀行は2024年3月のマイナス金利解除以降、合計4回の利上げを実施し、0.75%まで到達するのに約1年9カ月を要しました。依然として段階的なペースにとどまっています。この超低金利依存から脱却しつつ、物価上昇に応じた利上げをどこまで継続できるかが、円の信認を左右する焦点といえるでしょう。
利上げに耐える経済体質づくりが焦点に
急速な利上げは家計や企業に痛みを伴うため、日銀は慎重な判断を迫られています。民間の試算では、0.25%の利上げ1回あたり変動型住宅ローンにおける月々の返済額が数千円程度増えるとされており、生活防衛との両立が課題です。
企業側でも、1回の利上げが金融・保険業を除く全産業ベースの経常利益を1%弱押し下げるとの試算があり、借入依存度の高い中小企業ほど影響を受けやすいと指摘されています。
金融市場では、今後の政策金利がさらに引き上げられるとの観測も出ており、景気や企業収益への下押し圧力が強まるとの懸念もあります。高市早苗政権は国内投資の拡大と成長戦略を重視していますが、日本への生産・拠点回帰については慎重な見方も根強いのが実情です。
財政規律の維持と賃金上昇の両立、そして利上げ局面に耐えられる経済体質の構築が課題です。円の実質的な価値回復には日銀の金融政策だけでなく、政府・企業の取り組みが不可欠との指摘が相次いでいます。












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